2005年10月4日(火)「しんぶん赤旗」

青年ら力合わせ労組結成

松下電器・請負会社の労働者

12時間労働 食事は5分 正したい


■富  山

 「いままで、ぼくらは会社の手のひらで踊らされていた。このままではいけない。生活を守っていくためには、みんなで会社と交渉していかなければ」―。富山県魚津市にある松下電器の半導体生産工場で長時間労働と低賃金に置かれている請負会社の青年たちが話し合って労働組合を結成したのは、八月初旬のこと。それから二カ月。二十代を中心に十数人の青年たちは、職場環境の改善を求め、「会社の不当な扱いを正したい」と力を合わせています。(酒井慎太郎)

 約千人の社員と六百人前後の請負労働者が働いている松下魚津工場。そこに約六十人の請負労働者を送り込んでいるアウトソーシング社(本社・静岡市)で、建交労富山合同支部アウトソーシング分会が誕生しました。

 「身を削るような過酷な勤務実態で、入れ替わりの激しい職場なんですよ」。勤めて三年半と最も長く、職場のリーダー的存在の村田智さん(40)は、こう指摘します。

■違法状態

 勤務形態は、朝九時から夜九時までの日勤と、夜九時から朝九時までの夜勤の二交代です。

 二回ある休憩時間の計一時間半を除いて、実働は十時間半。日勤で四日続けて勤務し、二日間の休み。次は夜勤を四日続けて、二日休む…。

 このような昼夜逆転の“四勤二休”が交互のサイクルを年間を通じて繰り返しています。

 この“四勤二休”体制が一時期にとどまらず続くため、労働基準法が定める一日八時間・週四十時間の上限を週で十二・五時間、月に約五十二・五時間も超える違法状態です。労働時間を労使の合意で延長する三六協定(労基法第三六条に定める時間外協定)を結んだ場合でも、協定の限度時間を超過します。松下の社員は法定内に収まる“二勤二休”体制です。

 アウトソーシングが魚津工場に送り込む請負労働者は、多いときで百人を超えます。北は北海道から南は沖縄まで全国各地からやってきますが、大半が厳しい労働に耐えられず、一週間程度で去っていきました。

 村田さんは独身で、秋田市内のガソリンスタンドの所長を務めていた三十五歳のとき、収入を増やしたいと請負労働に転職。富山県黒部市のYKK工場で二年働き、新聞の折り込み広告から今の請負会社に応募し、同工場に転職してきました。

■半地下の部屋

 クリーンウエアをまとい、「窓のない半地下のような部屋」で半導体基盤づくりの暗室での作業に携わる村田さんは、作業が休憩時間にずれ込む忙しさで、食事も五、六分ですますほどです。

 「常に動きまわり、止まっている暇もなく、疲れます。十キロ以上は歩いて、体重も三キロは落ちました」といいます。

 工場から車で約五分の距離にある、請負会社が借り上げたアパートで暮らしています。「夜勤はつらい。昼に寝たって、夜は眠い。疲れていても眠れません」。昼夜を交互に働く長時間の“四勤二休”のため、工場外の地域とのかかわりも、なかなか築けません。「県外から来て地元に縁がなく、休日はパチンコに行くぐらい。知り合いは会社の人間だけです」

 労働組合づくりが始まったきっかけは、解雇された請負労働者から、富山県労連の労働相談センターにかかってきた一本の電話でした。結成の当日にも、四人の労働者が加入。その後も数人の組合員を迎えています。

 相談の電話を受け、支援にあたっている同センター所長で、建交労県本部の辰口光萬書記長は話します。「多くの請負労働者は地元につながりがなく、労働実態は明らかになりにくい。『こんな働き方は許せない』と実態を告発し、大本の松下電器の社会的責任にまで迫っていかなければ」

■交渉を続行中

 村田さんは「請負会社は契約書や給料の不透明さや間違いなど、やり方のすべてがいいかげんだ」と指摘します。月に最多で十二回ある夜勤の深夜勤務手当は、定額の一万円から二万円しか支払われず、勤務実態に合わない手当です。

 労働組合は、違法な長時間労働の是正や、労働実態に即した賃金の支払いを求めて交渉を続行中です。村田さんは「学習を重ね、職場の請負労働者すべてを視野に、要求と組織を前進させたい」と語っています。

 ▼請負会社 メーカーなどの製造ラインや営業業務を一括して受託し、自社で業務遂行責任者を負うアウトソーシング(外部委託)型のビジネスをする企業。


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