2005年10月2日(日)「しんぶん赤旗」
「朝日」発表でNHK
自民党との近すぎる距離
朝日新聞は九月三十日、NHK「ETV2001」改変問題報道について、同社が委嘱した第三者機関が、「自民党政治家の圧力で番組が改変された」という「朝日」の報道は「相応の根拠があった」が、一部は「確認取材が不足」との結論を示したことを明らかにしました。
これに対しNHKは同夜九時と十時のニュースで取り上げ、朝日が「取材に不十分な点を認める」と強調。さらに当事者の一人である安倍晋三自民党幹事長代理の「朝日報道は全くのねつ造である」とするコメントを報じました。
十時のニュースではさらに、この問題を調査する自民党チーム代表の佐田玄一郎副幹事長の「朝日は安倍氏らに謝罪せよ」というコメントまで紹介しました。NHKと自民党が一体となって、政治圧力による番組改変自体がなかったとする構図になっています。
しかし実態はどうか。安倍氏を含む関係者だれもが認める事実の一つは以下のことです。
二〇〇一年一月二十九日、首相官邸で安倍官房副長官(当時)がNHKの松尾放送総局長と野島担当局長に、「ETV2001」の内容について、「公正公平に」と要請した。NHKにとって返した両氏は番組試写を見た後、スタッフに改変を指示、その結果、番組は一分間短くなった―。
「朝日」が発表した第三者機関の報告もこの経過を相応の根拠があったと認めています。圧力による番組改変がなかったというなら、それを証明しなければならないのはまさにNHKの側です。それをやらないで、安倍氏の「ねつ造」発言をそのまま報道するのは、自身の責任にほおかぶりする態度です。
NHKはつい十日ほど前に「新生プラン」を発表しました。しかしその夜の特別番組「NHKは変わります」では、「ETV2001」について「圧力を受けて改変したことはない」と開き直るだけで、国民・視聴者の疑問や懸念にまったく答えませんでした。
この特別番組では、NHKが設置した識者懇談会での発言も紹介されていました。そこであるジャーナリストは「政治的中立の問題をきちんと言うべきだ」と率直な意見を述べていました。今回はまさに「自民党との近すぎる距離」が問われていたといえます。
そもそもNHKは「政治家への事前説明」は通常の業務と言い張り、その姿勢を撤回していません。政権党との密接な関係という本質を自己検討しないまま、「朝日」へ矛先を向けてすませるなら、公共放送としてのあり方が問われます。国民・視聴者からの信頼はますます離れていくだけではないでしょうか。(小寺松雄)