2005年10月2日(日)「しんぶん赤旗」

民主党 自民と競う中身は…

「小さな政府」 国民サービス縮小

郵政民営化 国の財産“切り売り”


 「巨大与党」に対する民主党の姿勢が、特別国会の冒頭からみえてきました。前原誠司代表は衆院本会議の代表質問で「反対のための反対はしない。主要な政策課題については対案を示す」(九月二十八日)と宣言。続く三十日の予算委員会では「今後の日本の改革をいい意味で競い合いたい」と与党との関係を示しました。問題は“対案型”で競い合う中身です。

■今でも不足部門

 前原氏「総理は『小さな政府』という。では日本は『小さな政府』か」

 小泉純一郎首相「民間に委ね、政府の関与を減らしていくことで『小さな政府』になっていく」

 前原氏「水膨れの政府だ。予算は大きい」

 予算委での両氏の議論の中心は、政府の責務を投げ捨てる「小さな政府」論でした。

 公務員の人員削減とともに「社会保障の分野を削るのは大事だ」と強調した小泉首相に、前原氏は「人事院勧告は大企業中心に考えられている。公務員給与の比較対象となる民間企業に零細企業も含めるべきだ」と、公務員給与の引き下げを提案。「小さな政府」の名で、暮らしと国民サービスを低い水準に導いていく競い合いとなっているのです。

 公務員削減は「小さな政府の第一歩」として、日本経団連の奥田碩会長ら財界側が政府の経済財政諮問会議で迫ってきたもの。「政府自らが身を切らなければ、国民に増税を要求できない」(牛尾治朗・元経済同友会代表幹事)と消費税増税につなげる狙いが…。

 自民、民主両党の「小さな政府」論では、公共サービスが解体しかねません。いま国民生活を守るうえで公務員が足りない分野は少なくなく、三十人学級を実現するには、新たに十一万人の教職員が必要。消防力の基準に対し五万人が不足しています。

■業界要求に忠実

 “対案型”でもう一つ注目されたのが、九月三十日にまとめた「郵政改革法案」。先の総選挙で「郵政問題で明確な対案を出すことができずに大敗した」(前原氏)との総活から、急きょまとめました。週明けにも国会に提出し、政府の郵政民営化法案と競い合おうとしています。

 民主党案は、二〇〇七年十月以降の簡易保険廃止と、郵便貯金の預入限度額を段階的に五百万円まで引き下げるというのが柱。現行の郵便・郵貯・簡保の郵政三事業をバラバラにし、国民の財産を民間大企業に売り渡していく政府案と基本は変わりません。

 民主党の松本剛明政調会長自身、同党案について「民業圧迫にならないように、(郵貯・簡保を)適正な規模にするのは同じだ。ただフリーで市場で争う点では、私たちの方が(実施する時期が)早くていい」(九月三十日の衆院予算委)といっています。

 民主党は政府案との“違い”をみせるため「郵便及び郵便貯金については国の責任で全国的サービスを維持する」としています。郵政三事業にとって、郵貯は最大の収益源で、だからこそ二万四千の郵便局ネットワークも維持が可能。しかし郵貯の預入限度額を半分にすれば、事業規模も利益も半分になり、郵便局ネットワークの維持もできず、人員削減につながります。

 結局、民営化して郵貯・簡保をつぶすのが政府案なら、民主党は郵貯・簡保を縮小・廃止し、成り立たなくさせてから民営化するという手順の違いにすぎません。

 自民・民主両党の郵政問題の競い合いから浮かび上がるのは、郵貯・簡保の縮小・廃止を求め続けている日米の銀行・生保業界に忠実にこたえた姿です。(高柳幸雄)


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