2005年10月1日(土)「しんぶん赤旗」

主張

原子力政策大綱案

原発依存を強める無謀な路線


 政府の原子力委員会新計画策定会議が、原子力利用の長期計画として原子力政策大綱案をまとめました。近く原子力委員会で決定されます。

 原発を基幹電源とし核燃料サイクルを進めることを、これまで以上に強い姿勢で打ち出しました。二十一世紀の日本のエネルギーを、危険が明らかな路線にゆだねる無謀な政策です。

■核燃料サイクルに固執

 核燃料サイクルとは、原発の使用済み燃料を再処理して、抽出したプルトニウムを核燃料として利用するものです。その主役は高速増殖炉です。ウランよりけた違いに強い放射能をもつプルトニウムを燃料とし、水や空気と激しく反応するナトリウムを冷却材に使うなど、きわめて危険な原子炉です。

 海外では、技術的困難に加え経済的にも多大な経費がかかるため、多くの国がこの路線から撤退しています。日本では、高速増殖炉「もんじゅ」や核燃料加工施設JCOでの大事故もあり、核燃料サイクルの安全性が根本から問われています。

 にもかかわらず大綱案は、二〇五〇年ごろの高速増殖炉導入を掲げ、政府の支援を強めるよう求めました。当面はプルサーマルを推進することも確認しました。九州電力玄海原発のプルサーマル計画を国が許可したこととともに、プルサーマル実施の動きを後押しするものです。

 さらに大綱案は、既設原発を酷使する方針を打ち出しました。

 いま日本では、五十三基の原発が発電電力量の約三割を供給しています。これを三―四割あるいはそれ以上にすることをめざし、当面、既設原発を最大限活用するとしました。その具体策は、出力増強、定期検査の柔軟化、定期検査間隔の長期化などにより、設備利用率を上げることです。三十年の寿命といわれた原発を六十年運転することも想定した高経年化対策も行います。

 日本の原発の大半は、二十年も三十年も前につくられたものです。昨年八月の関西電力美浜原発事故は、老朽配管の破裂が原因でした。設備利用率を下げないために配管補修の先送りが常態化していました。

 老朽原発の酷使と検査の質の低下を招くやりかたは、美浜原発事故の教訓を無視するものです。

 こうした路線を、大綱案は、原発にはエネルギーの安定供給や地球温暖化対策への貢献という「大きな公益がある」と合理化しています。

 技術的に未確立で大きな事故・事件を繰り返している原発に対して、安定供給源としての国民的合意はありません。一昨年夏に起こった首都圏の電力「危機」も、原発に依存し続けることの危うさを示しました。

 今年八月の宮城県沖地震では耐震設計の想定を超す揺れが観測され、原発の耐震性も問われています。

■安全優先への転換を

 「公益」というなら、原子力利用の安全確保こそが最重要課題です。原発立地県の福島・新潟の両知事も指摘するように、原発を推進する経済産業省のもとに安全規制を担う原子力安全・保安院をおくような体制では、その保証はありません。

 安全優先の立場で原子力政策を根本的に見直すことが必要です。核燃料サイクル路線からの撤退、既存原発の計画的縮小、独立した規制機関の確立など、安全優先の体制と政策の確立こそが求められます。

 安定供給や地球温暖化対策のためには、危険な原発依存ではなく、自然エネルギーの開発・利用に本格的にとりくむべきです。


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