2005年9月30日(金)「しんぶん赤旗」
強まる企業献金・政党助成金依存
2004年政治資金収支報告
過去最高の143億円
上位20団体 費用の8倍の収入
パーティー収入
二〇〇四年の政治資金パーティーによる収入は総額百四十二億五千八百万円で、参院選のあった二〇〇一年の百三十六億五千八百万円を上回り、過去最高となりました。政治資金収支報告書を提出した政治団体の収入全体に占める割合も10・3%と過去最高を記録しました。
パーティーを開いたのは四百七団体。このうち収入一千万円以上の「特定パーティー」を開いたのは二百七十団体で、収入一億円超も二十二団体にのぼりました。
上位二十団体で見ると、平均して二千六十三万円の費用で、約八倍の一億六千五百七十万円の収入を得ています。二位の平沼会(自民・平沼赳夫氏)は、五百万円の費用で二億八千万円もの純益という“荒稼ぎ”ぶりです。
公表されているパーティー券の購入先には、日本医師連盟などの業界団体や、その政治家に縁のある企業・団体がズラリ。パーティーが「形を変えた政治献金」といわれるゆえんです。
最も収入が多かったのは平成研究会(自民党旧橋本派)。三千八百十七万円の費用で三億七千万円の収入を得ました。パーティー券購入先には、製薬産業政治連盟(百五十万円)、日本薬剤師連盟(百三十四万円)、日本チェーンドラッグストア協会政治連盟(百万円)など医薬関係が目立ちます。
五位につけている清和政策研究会(森派)のパーティーでは、旧橋本派への一億円ヤミ献金が問題となった日本歯科医師連盟が百万円分の券を買っています。
民主党は昨年五月に開いた「大躍進パーティー」で二億円を超える収益をあげました。前年の同パーティーに比べて企業の大口購入が増えましたが、連合(百五十万円)、日本教職員組合(百五十万円)、「解同」(部落解放同盟中央本部・百二十二万円)など労組や団体のまとめ買いが多いのも特徴です。
六位の製薬産業政治連盟(代表=武田國男・武田薬品工業会長、日本経団連副会長)はパーティー収入上位の“常連”。〇四年も計六回の「セミナー」で製薬会社から一億七千八百万円を集め、政治献金やパーティー券代を政党・政治家にばらまきました。
防衛庁契約15社で2億
武器禁輸緩和など求める
軍需企業献金
自衛隊の戦車、艦船、航空機といった装備品などを受注している軍需企業が二〇〇四年に自民党におこなった献金は、防衛庁との契約額上位十五社(〇四年度)の合計で、一億九千六百八十九万円にのぼります。この上位十五社の防衛庁との契約総額は九千七十四億円。防衛庁の年間調達額の約七割にあたります。
財界・軍需企業は〇四年、新たなもうけ口を広げるため、自衛隊の海外派兵の推進や武器禁輸原則の緩和といった憲法を踏み破る措置を政府・与党に露骨に求めてきました。
日本経団連は、政府の新「防衛計画の大綱」の策定に向け、「今後の防衛力整備のあり方について」と題する提言を発表(七月)。「国際貢献を果たすため、防衛力の質的な変化が求められている」として自衛隊海外派兵の推進を迫るとともに、軍事予算の「十分な確保」や武器禁輸原則の緩和などを要求しました。
三菱重工業の西岡喬会長(日本経団連副会長)は、自民・民主の国防族議員らが参加する会合(十一月)で、武器禁輸原則見直しの動きが進んでいることについて、「産業界としても極めて評価する」と述べ、その具体化を強く求めました。
政府が十二月に決定した新「防衛計画の大綱」は、自衛隊海外派兵の「本来任務化」の方向を明記。政府は「ミサイル防衛」(MD)の共同開発・生産などのために武器禁輸原則の緩和も打ち出しました。
防衛庁は今年八月、〇六年度予算概算要求で日米が共同技術研究を進めている次世代MDシステムの共同開発に踏み出すことを決めています。
旧橋本派は倍増
各派 パーティー頼み
自民派閥の資金
自民党の七派閥・二グループが二〇〇四年に集めた政治資金は、前年比17・4%増の二十四億四千八百八十五万円でした。
橋本龍太郎元首相が日本歯科医師連盟(日歯連)からヤミ献金を受けた旧橋本派は資金を倍増させました。各派ともパーティー収入の割合が多いのが特徴です。(収入順。カッコ内は収入全体に占めるパーティー収入の割合)
(1)旧橋本派
収入は前年比三億三千八百七十四万円増の七億四百九十一万円(52%)で、四年ぶりの増収。パーティー収入が三億六千九百三十万円で、前年比一億三千二百九十七万円増です。支出項目不明の経費として七百六十三万円を計上しています。
(2)亀井派
収入は前年比二千八百六万円増の三億八千四百五十九万円(40%)。前年は行わなかった同派主催のパーティーで一億五千四百六十八万円を集めました。前年、パーティーで三億六千五百十二万円を集め、同派に二億五千万円を寄付した亀井静香後援会は、一億三千万円を寄付しています。
(3)森派
収入は三千八百六万円増の三億七千三百六十七万円(57%)。パーティー収入は二億一千百八十七万円。
(4)山崎派
収入は前年比二千二百六十二万円増の二億七千百七十二万円(48%)。パーティー収入は一億三千百十七万円。
(5)堀内派
収入は前年比六百七十八万円減の二億五千七十九万円(63%)。パーティー収入は一億五千七百三十二万円。
(6)高村派
収入は前年比四千四百七十二万円減の一億二千八百二十四万円(71%)。パーティー収入は九千九十二万円。
(7)小里派
収入は前年比二千百二十八万円増の一億二千七百五十万円(83%)。パーティー収入は一億五百六十五万円。
(8)二階グループ
収入は前年比三千九百四十九万円減の一億二千七百三十五万円(54%)。前年行わなかった同派主催のパーティーを二回開き、六千八百七十万円を集めています。
(9)河野グループ
収入は前年比五百万円増の八千八万円(79%)。パーティー収入は六千二百九十万円。
自民の政策活動費半減
選挙対策に大口の支出
自民党が二○○四年に党幹部らに渡した「政策活動費」の総額は、三十四億四千七百万円と前年比52・9%の大幅減となりました。○三年が衆院選で大幅に増加した反動で、二年ぶりに前年を下回りました。主に七月の参院選につぎ込まれたとみられ、重要政策の決定に際し党内対策に使われた形跡はうかがえません。
政策活動費は選挙対策のほか、野党対策や党内対策にも使われます。しかし、政府が自民党内の反発を押し切って郵政民営化法案を閣議決定した九月十日前後の支出はありませんでした。
一方、四月の衆院補欠選挙と七月の参院選の前に、選挙対策資金とみられる大口の支出が目立ちます。安倍晋三幹事長(当時)は、三戦全勝した衆院補選の告示直前に一億一千万円を引き出しました。また、参院選に向けた活動が本格化した六月上旬から七月の投票日にかけ、安倍氏は四億八千二百万円、青木幹雄参院幹事長(同)は二億一千五百万円の支出を受けました。
日歯連は今年も「不明」
捜査当局に書類押収され
自民党旧橋本派への一億円ヤミ献金事件で前会長が逮捕され、有罪判決が確定した日本歯科医師連盟(日歯連)の二○○四年政治資金収支報告書は、前年に続いてすべての記載事項が「不明」とされました。捜査当局に関係書類を押収されているためです。
献金などを受けた側の政治団体の報告書によると、日歯連は自民党森派のパーティー券を百万円購入しています。日歯連側は「押収された資料が戻ってきたら、きちっと整理して正確に収支報告をしたい」としています。
▼政治献金のしくみ
政治資金収支報告書 政党や政治団体が一年間の収入と支出を届け出たもの。政治献金を受けることができるのは政党(支部含む)とその政治資金団体、政治家個人の資金管理団体(一団体限定)と政治団体です。
報告書の提出先は総務大臣(二つ以上の都道府県にわたって活動する政党や政治団体など)と都道府県選挙管理委員会(主に都道府県内で活動する政党支部や政治団体)の二つ。毎年九月に総務大臣届け出分が公表されます。都道府県分はそれぞれの選管ごとに順次公表されるため、一人の政治家が資金管理団体と代表を務める政党支部、政治団体と複数の“財布”を持つ場合、政治とカネの全体像が一度に把握できなくなっています。
都道府県選管分の政治資金は年々増え続け、総務大臣分とを合わせると例年三千億円を超える規模になります。
献金には個人献金と企業・団体献金があります。政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金は禁止(二〇〇〇年から)ですが、政党本部と支部、政治資金団体で企業・団体献金を受け取る道が温存されています。