2005年9月30日(金)「しんぶん赤旗」

主張

定率減税廃止

耳を疑う小泉首相の弁明


 「定率減税はサラリーマンのみならず自営業者などすべての所得税納税者を対象とするものだから、(定率減税廃止は)サラリーマン増税とは異なる」(小泉首相、二十八日の衆院本会議での答弁)

 自民党は総選挙の「政権公約」に「『サラリーマン増税』を行うとの政府税調の考え方はとらない」と明記しています。「サラリーマン増税ありきを自民党は『許さない!』」と大宣伝しました。

 ところが、投票日のわずか二日後に谷垣財務相が定率減税を廃止する方針を表明しました。

■文字通りの公約違反

 代表質問で「文字通りの公約違反だ」と追及した日本共産党の志位和夫委員長に対する弁明が、冒頭の小泉首相の答弁です。

 政府税制調査会が六月に発表した所得税「改革」の報告書は、サラリーマン層を中心とする庶民大増税を打ち出しました。マスメディアも「サラリーマン大増税を許すな」と、いっせいに報道しました。

 その政府税調の増税方針の筆頭に、来年度に「定率減税を廃止する」必要があるとはっきり書いてあります。定率減税廃止とは、まさにサラリーマン増税そのものです。

 政府税調の石弘光会長は、負担は自営業者を含めた「オールジャパン」でと言い訳しながら、「就業者の八割を占めるサラリーマンに頑張ってもらうほかない」と、「サラリーマン直撃」を認めています。

 所得税の納税者数は、源泉徴収されるサラリーマンが三千八百万人で、事業所得者が百八十万人、農業所得者が十四万人となっています。定率減税の廃止によって打撃を受ける人の大半がサラリーマンだということは明らかです。

 来年一月から定率減税が半減され、さらに全廃されると年収四百万円から九百万円の層では税負担が二割以上増えることになります。

 サラリーマンだけでなく自営業者にも増税になるからサラリーマン増税ではないという首相の答弁は、一国の行政の責任者の発言として耳を疑う詭弁(きべん)です。

 定率減税は一九九九年に「恒久的減税」として実施されました。このとき、同時に大企業向けの法人税率の引き下げ、一部の高額所得者を潤す所得税の最高税率引き下げも行われました。しかし、トヨタ自動車会長の奥田碩日本経団連会長が全面的にサポートする小泉内閣は、大企業と高額所得者の減税をやめることなど話題にもしてきませんでした。

 この六年間に大企業のもうけも株主への配当も倍増、大企業の役員賞与は三倍近くに跳ね上がりました。対照的に、サラリーマンの給料は毎年減少し続け、家計の所得は総額で十四兆円も落ち込んでいます。

■真っ先に見直すべきは

 景気が回復したから見直すというなら、真っ先にやるべきは大企業や高額所得者へのゆきすぎた減税措置です。この点を指摘した志位氏に小泉首相は、大企業向け減税などは税制の抜本改革の先取りであり、単なる景気対策の定率減税とは位置付けが違うと答えました。

 「この度の所得税制は一遍限りのものではない」「これ以上の増税になることはない」という、定率減税の導入当時の宮沢蔵相答弁を忘れてもらっては困ります。何より、首相の答弁には抜きがたい財界・大金持ち優遇の姿勢が表れています。

 総選挙の公約にも、導入当時の約束にも反した定率減税の廃止は断念するよう求めます。


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