2005年9月29日(木)「しんぶん赤旗」
イラク米軍
組織的拷問は明らか
“バットで足を折った”
“皮膚や目に化学物質”
■報告相次ぐ
【ワシントン=浜谷浩司】米軍がイラクでの収容者に対して組織的に拷問・虐待を行っていたことが、人権団体がこの間に公表した証言や文書で一段と明らかになっています。虐待は一部の「不心得者」による「例外的」な問題だとするブッシュ米政権の主張を覆し、米軍上層部の責任を厳しく問うものとなっています。
■「例外的」を否定
その一つ「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」(HRW)は二十五日、「指導部の失敗―第八二空挺(くうてい)師団によるイラク収容者拷問の直接体験」と題した報告書を発表。同師団所属の大尉一人と軍曹二人が同団体に対して行った証言によって、収容者を野球のバットで殴打するなど非人間的扱いが日常的に行われていたことが明らかになったとしています。
拷問は二〇〇三年から〇四年の期間にイラク中部のファルージャに近い米軍マーキュリー前進作戦基地で行われていたもの。上官の命令や承認を得たケースがもっぱらだとしています。報告書は次の事実を列挙しています。
「バットで殴り収容者の足を折った」「両手を広げさせ、計五ガロン(約十九リットル)の水を持たせて、意識を失うまで動作をさせた」「収容者の皮膚や目に化学物質を浴びせた」「無理な姿勢をとらせた」「睡眠妨害」「極端な暑さや寒さにさらした」「人間ピラミッドをつくらせた」「食べ物や水を与えなかった」
こうした事態は、情報担当者の指示で尋問に先立って行われることが多かったとされており、文字通り拷問にほかなりません。
報告は、捕虜の取り扱いを定めたジュネーブ条約の適用などで、米軍と米国防省の指導部の責任を指摘。さらに、虐待を「例外的」とするブッシュ政権の主張を「否定するもの」としています。
証言者はイラクとアフガニスタンで目撃した虐待について、二〇〇二年にブッシュ大統領が、アフガンでの収容者にジュネーブ条約は適用されないと決定したことが原因になったとしています。
■「映画で覚えた」
一方、拷問関連の秘密文書の開示を政府に要求してきた米市民的自由同盟(ACLU)は九月半ば、新たに千八百ページにものぼる陸軍関係などの文書を公表しています。
それによると、イラクで収容者を担当した少なくとも三つの米軍部隊についての調査で、まともな訓練を受けていない兵士が「映画で覚えた」テクニックを使って尋問したなどの事実が明らかになったといいます。
ACLU報告もHRW報告と同様に、虐待に「組織的な問題はなかった」とする軍の主張を「否定するものだ」と指摘しています。
共和党の有力議員マケイン上院議員は二十五日のABCテレビ番組で、米軍の組織的拷問が明らかになっていることについて、「(拷問は)やめさせなければならない」「外国での米国のイメージを傷つけている」と述べました。
ところが、ブッシュ大統領の懐刀で同政権の対外イメージ改善担当となったヒューズ国務次官はカイロで二十五日、イラク占領についての中東の見方には「多くの誤解、(悪意の)扇動、憎悪演説、誤り」があると主張しました。
しかし、中東と世界に高まる「反米感情」にはブッシュ政権の政策にこそ原因と責任があることを、イラクでの拷問が雄弁に物語っています。