2005年9月28日(水)「しんぶん赤旗」

シリーズ 労働契約法制

労働条件切り下げ自由に

対等の保障ない労使委員会

厚労省の研究会報告


 労働法制研究会の報告は、労働組合のない職場が九割を超える現状のもとで、労働条件について労使が対等な立場で協議する場として、常設的な労使委員会の設置を提言しています。

 労働条件の変更は、労使の利害が鋭くぶつかりあう問題です。労使協議の場をつくった場合、経済的に弱い立場の労働者が、自由に意見をのべ、主張できるようにする保障が何より大事です。

 報告は、委員の半数以上を労働者委員とし、選出方法については、労働者が直接選出するような仕組みを考えています。ところが、肝心の労使対等をどう保障するかには何もふれていません。

■名ばかりの協議

 労働組合は、団体交渉やストライキの権利をもち、会社の不法な介入や不利益な取り扱いに対しては、労働委員会による救済が受けられます。これらによって労使対等が保障されています。

 これに対して、労使委員会には職場の上下関係がそのまま持ち込まれます。自由に意見がいえる保障がなければ、協議とは名ばかりで、使用者側の提案に「労働者側も合意した」というお墨付きを与えるだけになってしまいます。

 労使委員会の効力はどうでしょう。

 報告は、この制度を使用者にとって使い勝手のよいものとするために、次のようにあけすけに語ります。

 「使用者がこれを設置するとともに労働条件の決定・変更に関する協議を行うことを促進するためには、労使委員会が設置されそこにおいて合意が得られている場合等には労働契約法制において一定の効果を与えることが適当である」

■解雇の金銭解決

 「一定の効果」どころではありません。

 労使委員会で五分の四以上の賛成があれば、就業規則を労働者にとって不利益に変更しても、法律的には有効になるとしています。使用者側の申し立てによる解雇の金銭解決を認めたり、解決金の額の基準を決めることもできます。配転、出向、解雇などでも、労使委員会で合意していると、あとで裁判になっても、「権利乱用でない」と認められるようになっています。

 中間まとめの段階から、「就業規則の改悪に不服な労働者にとって、変更が法律的に有効となれば裁判で争う道まで奪われる」「解雇という労働者の運命を左右するような問題にまで権限を与えていいのか」などの疑問、批判が出されました。報告は、これらの意見を完全に無視しました。

 このままでの同制度導入は明らかに拙速です。


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