2005年9月28日(水)「しんぶん赤旗」
主張
国連分担金問題
打算外交では信頼得られない
町村外相は、国連総会での一般演説(十七日)で、「分担率において、国連加盟国の地位と責任が適切に考慮されることが確保されるよう最大限の努力を行っていく」とのべました。国連分担金の額に応じて「地位」を決めるべきで、約二割を負担している日本の安保理常任理事国入りは当然だという主張です。裏返せば、常任理事国入りが認められなければ、分担金もそれなりのものにするという意味になります。
■アジアで支持されず
町村外相は、七月にも国連本部での記者会見で、常任理事国入りが実現しない場合は、「国連への拠出金を削減せよという世論が急速に広がる」とのべています。
分担金削減をちらつかせて常任理事国入りを求めるようなやり方は、“金持ち国の鼻持ちならない態度”と見られます。日本外交への批判と不信を大きくする結果になります。
なぜ、日本は常任理事国入りができないのでしょうか。イタリアから、経済援助の見返りに支持を得ようとしていると批判されたような多数派工作をしても、日本への支持が集まらないのは、明白な理由があります。
一番の問題は、日本政府が、侵略戦争を根本から反省する態度をとらないため、アジアで孤立していることです。小泉首相が侵略戦争を正当化する靖国神社に参拝したり、侵略美化の歴史教科書を検定合格としたことなどは、アジア諸国民の心を傷つけました。日本の侵略で大きな被害を受けたアジア諸国は、警戒心を強めており、日本の常任理事国入りを支持する国はほとんどありません。
もともと、侵略戦争の正当化は、日本、ドイツ、イタリアがおこした侵略戦争への反省のうえにつくられた国連の基礎をくつがえすものであり、国連外交と両立しません。
ブッシュ政権のイラク攻撃をいち早く支持し、自衛隊派兵を続ける小泉外交も不信を買う原因です。イラク侵略戦争は、アメリカの軍事同盟国さえ反対する先制攻撃戦争です。大義もない戦争に嫌気がさし、撤退したり、撤退を表明する軍隊派遣国が相次いでいます。平和の流れに逆行する外交では、信頼されません。
カネで票を買うような「多数派工作」も問題です。小泉首相は、七月のサミットで、三年間でアフリカ支援を倍増すると約束し、所信表明のなかでも「途上国の開発や貧困の克服」を強調しました。小泉内閣は、二〇〇三年の二国間ODA総額を、二〇〇〇年に比べ約38%減らしました。とくに、アフリカ向けは45%も削減しており、「倍増」しても、もとに戻る程度です。さんざん切り縮めておいて、急に大幅増をいっても、常任理事国入りのためという打算からと見られても仕方がありません。
常任理事国入りというのは、経済援助を引き換えにする多数派工作や国連分担金削減の脅しでなるべきものではありません。自然に日本を推す声がでてこそ可能です。外交姿勢を抜本的に転換し、世界とアジアの信頼を得る努力を地道に行うことが求められます。
■憲法生かした外交に
国連憲章の原則である国際紛争の平和的解決を、日本国憲法は、より徹底した形で定めています。日本政府は、憲法にそって、国連加盟のさい、軍事的協力は行わない、それ以外の平和的手段で貢献することを表明して加盟しました。
憲法を生かした外交によって、国連憲章にもとづく平和秩序確立のため、積極的な役割を果たすべきです。