2005年9月28日(水)「しんぶん赤旗」
元日本航空客室乗務員
くも膜下出血は労災
千葉地裁 労基署の処分取り消し
日本航空の客室乗務員だった岩本章子さん(58)が、くも膜下出血を労災と認めなかった千葉・成田労働基準監督署長を相手取り、「疾病は業務に起因することは明らか」として、不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決が二十七日、千葉地裁でありました。
山口博裁判長は、原告の訴えを全面的に認め、労基署長の不支給処分の取り消しを命じました。脳・心臓疾患に関する客室乗務員の勝利判決は初めてです。
山口裁判長は「業務による過重な精神的身体的な負荷が基礎疾患である原告の脳動脈瘤(りゅう)をその自然的経過を超えて増悪させ、発症に至った」としました。
訴状によると、岩本さんは一九九六年五月、乗務で滞在中の香港のホテルで、くも膜下出血で倒れました。一命はとりとめたものの、現在も右半身不随と言語障害の後遺症に苦しんでいます。
倒れる六カ月前からとくに乗務がきついといわれる南米線・ニューヨーク線を毎月搭乗。時差の影響が大きく、外地での睡眠時間もとれないばかりか、日本に帰着しても時差に悩まされ、疲労を蓄積していました。
判決では、こうした業務の特殊性をことごとく認定し、「時差の影響や不規則な勤務実態であることを照らせば、睡眠の質が良かったとはいえない」と断じました。
判決後の勝利報告集会で、岩本さんは照れたような表情で「大丈夫です」と一言。満面の笑みを浮かべ、支援者に感謝をのべました。
日本航空では九三年に年間八百四十時間だった乗務時間制限を拡大し、職場では「このままでは誰かが倒れる」と健康に対する不安の声があがっていました。