2005年9月27日(火)「しんぶん赤旗」
鼓動
楽天・田尾監督の解任
球団の責任押し付けはファンに支持されるか
真っ赤に染まったフルキャストスタジアム宮城に25日、“田尾コール”が響き渡りました。
半世紀ぶりに新規参入したプロ野球球団の楽天が田尾監督を解任しました。地元での最終戦で、田尾監督は「日本一の応援ありがとうございました。選手はだれ一人手を抜いていませんでした。38勝95敗1分けは私の誇りです」と語りました。1年間、チームを見守り声援しつづけてきたファンからは、惜しみない拍手が送られました。
3年契約の1年目での解任。たしかに、勝率が2割台という成績をみるかぎりは、プロとしての責任が問われても仕方がないことでしょう。しかし、合併球団オリックスの優先獲得枠からもれた選手や他球団を自由契約になった選手中心のスタートは、だれもが苦戦を予想していました。
しかも、球団経営側が補強費をしぶり、トレードや外国人選手の獲得に消極的だったことも低迷の要因の一つになっています。何もかも手探り状態で船出した新チーム。不振の責任を、監督一人に押し付けるやり方は疑問でなりません。
今季の楽天は、苦しいたたかいがつづいても、ベンチと選手、ファンが一体になっていました。
2月の久米島キャンプでは、監督やコーチをはじめ、選手、裏方など全員のグラウンド整備から始まりました。チーム全体に新しい歴史をつくるんだという意気込みと固いきずなを感じました。
公式戦が始まり、ひとつ勝つにも大変な状況のなかで、選手らが「みんな前向き。チームの雰囲気もいい」「これだけ負けが込んでも、(チーム内に)不協和音がうまれない。これは、すごい」と口々に語るように、一体感は最後まで失われませんでした。
年齢や実績にこだわらず選手起用に実力主義を貫いた田尾監督は、選手からの信頼も厚く「僕たちの責任でもある」「1年で解任は考えられない」と、解任を惜しむ声があがっています。
米田球団代表は「強くすることが結果的に期待に応えられることになると思う」といいます。もちろん、チーム強化の努力は欠かせません。しかし、すぐに監督の首をすげ替え責任をとらせるこうした球団のやり方を、地元にチームを根づかせようとしてきたファンが支持するでしょうか。
今後、チームがまとまっていけるのか、ファンに愛される球団をつくっていけるのか――。新球団の動向が厳しい目にさらされることは間違いありません。(栗原千鶴)