2005年9月27日(火)「しんぶん赤旗」
厚労省の研究会報告
リストラ使用者有利に
財界の規制緩和を受け入れ
労働契約のルールづくりを検討してきた厚生労働省の「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が報告を発表しました。「労使対等」を繰り返しいいますが、言葉とは裏腹に、使用者にだけ有利な悪法づくりに道をつけるものとなっています。
大企業を中心としたリストラで、解雇や賃下げなど労働者個人と使用者の間のトラブルが急増しています。厚労省がまとめた二〇〇四年度の個別労働紛争の相談件数は十六万件を超えました。
このうち、紛争調整委員会にあっせんを申請したケースは六千十四件。申請者の98%が労働者です。内容は、解雇に関するものが最も多く(40・5%)、労働条件引き下げ(13・0%)と続いています。経営者が応じないために、あっせんが打ち切られた事例は二千七百件にのぼります。
■“交渉力に格差”
紛争の原因は圧倒的に使用者の側からのものです。紛争解決の話し合いにさえ応じないのは、労働者を保護する労働契約のルールも、監督指導や罰則による使用者に対する規制もないためです。
報告も、紛争や労働基準法違反の事例が増えていることを示し、「組織としての企業と個人としての労働者であることによる交渉力等の格差から、労働関係が必ずしも適正に運営されないことが問題」と、指摘します。
しかし、結論は百八十度異なります。報告は、労働契約法の履行が「労使当事者間の信頼関係によって図られるべきである」とのべ、「監督指導は行わないことが適当」としています。
もうけ第一主義でリストラを強行し、法律違反のサービス残業を押し付ける企業との「信頼関係」だけをいうのは、現実を見ない空論です。
■解雇自由ルール
ルールづくりでも、使用者側に立った規制外しは徹底しています。
“紛争なし”に労働条件切り下げを可能にする労使委員会制度や「雇用継続型契約変更制度」の導入を提言しています。配置転換や解雇・整理解雇にあたって使用者が講じなければならない措置は、法律では決めずに、厚労省の指針で示せばよいとしています。報告自身が「指針は、それ自体では法的拘束力はない」と書いています。
“解雇自由のルール”も盛り込もうとしています。ホワイトカラー労働者を労働時間規制から除外するホワイトカラー・エグゼンプション制度の推進もかかげています。
報告は、日本経団連の「(労働契約法制は)たとえ違反に罰則がともなわないものでも、法律による規制の追加は労使自治、規制緩和の動きに逆行する」(二〇〇五年版「経営労働政策委員会報告」)という要求にぴったりと歩調をあわせたものです。