2005年9月27日(火)「しんぶん赤旗」
サマワ市民ら自衛隊批判
“復興は口実 目的は米支援”
自衛隊が駐留するイラク南部サマワの情勢は、十二月十四日の駐留期限を前に大きく揺れています。駐留開始から一年九カ月がたちました。電気や水などの生活基盤や失業が一向に改善されていないことで、「復興支援」を約束した自衛隊に住民は厳しい目を向けています。二十日から二十二日にかけ、十数人のサマワ住民に電話で取材しました。(カイロ=小泉大介)
これまで数回にわたり住民に電話取材してきましたが、今回は自衛隊批判が、対米強硬派といわれる宗教指導者ムクタダ・サドル師支持者だけでなく一般市民に広がっていることを実感させられました。
「いまも毎日八時間以上の停電があります。水道が出るのは午前二時間、夜一時間だけです。自衛隊が約束した復興はまったくといっていいほど果たされていません。隊員を通りで見ることもありません。一体ここで何をやっているのでしょうか」―こう語ったのは、サマワを州都とするムサンナ州職員のグワド・ガウルさん(54)。
主婦のファトゥマ・セッディークさん(43)は「サマワ中心部では学校の門前にゴミが山積みになるほど惨めな状況です。自衛隊がいう復興などどこにも見当たりません」。
失業中の男性、イサム・ファイサルさん(44)はさらに辛らつです。
「自衛隊は子どもや老人に笑顔のあいさつを送るだけで、生活に役立つことを何もやってくれませんでした。日本ほどの経済力と技術力を持った国なら、そのごく一部を使っただけでサマワの復興などたやすいはずです」「復興の約束はただの口実で、駐留には別の目的、米国の占領を助けるという目的があると考えざるを得ません」
■「復興の約束どこへ」
今年十二月まで自衛隊がサマワにとどまった場合、二年間の総駐留経費は予算ベースで約六百五十億円の巨額に達します。活動の中身といえば、最大の柱であった給水は今年に入り完全に停止し、もっぱら学校などの修復や壁の塗り替えです。
■イラク人が作業
その壁塗りでさえ、同市に住む男性、ハイダル・ムハンマドさん(33)が「日本人は表に出ず、実際に作業しているのはイラク人」というように、自衛隊の役割は発注業務にほぼ限られています。約六百人の大部隊を撤退させ、浮いた駐留経費をイラク政府やサマワ当局に直接提供する方がはるかに効率的で、雇用の改善に役立つのは明らかです。
大学で工学を専攻したにもかかわらず現在失業状態というムハンマドさんはいいました。
「知人もほとんどが失業中で、サマワ全体の失業率は間違いなく六割以上です。サマワの人々は忍耐強いのですが、それも限界に近づいています。復興の約束が果たされない一方で、いまも占領軍の無差別爆撃で多くのイラク人が命を落としています。これでは自衛隊はたんに米軍の占領支援をしているというしかありません」
そもそも、自衛隊の派兵はサマワが「非戦闘地域」との前提で強行されたもの。同隊を標的にしたとみられる攻撃が多発し、宿営地に閉じこもらざるを得ない現実が、派兵の根拠を完全に突き崩しています。自衛隊をとりまく環境は、米英軍による軍事攻撃の激化でさらに悪化しています。
■テロ原因は米英
オランダ軍撤退後、自衛隊は現在、イラク南部を管轄する英軍の「保護」下にありますが、十六日にはサマワ市街をパトロール中の英兵が何者かに襲撃され負傷しました。十九日には南部バスラで、イラク警官を殺害し拘束された兵士を奪還するため、英軍が刑務所に突入する事件が発生。バスラと同じ南部のサマワでも反英感情がかつてなく高まっており、ムサンナ州評議会は二十四日、突入事件に抗議し駐留英軍への協力の中止を決めました。
小学校の男性教師、ハッサン・カジムさん(26)は「イラクでテロと暴力が頻発している直接の原因は米英をはじめとした占領軍の存在にあります。日本政府が自衛隊の駐留を延長すれば、多くのサマワ住民が米軍を支援するためという自衛隊の駐留目的を悟り、反自衛隊のデモに繰り出すことになるでしょう」と語りました。
「復興がはかどらないおもな責任は行政の腐敗にある」「自衛隊は米軍のように凶暴なことはしていない」などの意見も聞かれました。しかし、ごく若い世代からも次のような声が出ていることを見た時、遠くない将来、反自衛隊の声が圧倒的多数になる可能性は極めて高いといえます。
「最初に自衛隊がサマワにやって来たとき、他の町の人から幸運だといわれました。しかしどうでしょう。わたしたちは動物も飲まないような水での生活を強いられ、学校を卒業しても就職できません。私は日本の首相にいいたい。自衛隊が復興とは別の目的でサマワにやって来たのなら、神はあなたを罰するでしょうと」(十八歳の女子高生、トーハ・アミルさん)
「復興という自衛隊駐留の説明はまったくのうそでした。駐留は米国による占領を支援するためです。わたしたちは占領を拒否しています。日本の軍隊がこれ以上サマワにとどまることを拒否します」(十六歳の女子高生、マルヤム・アブドラさん)