2005年9月25日(日)「しんぶん赤旗」
沖縄米軍普天間「移設」
シュワブ移設、嘉手納統合…
「県内たらい回し」に県民反発
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日米両政府が在日米軍再編の「中間報告」を来月にも発表しようとしているもとで、沖縄の米海兵隊普天間航空基地(宜野湾市)の新たな移設案がさまざまにとりざたされています。名護市辺野古沖への代替新基地の建設計画がゆきづまっているためです。しかしどの案も、県民多数が強く反対している「基地の県内たらい回し」です。
■「絵を描いた」
「今年六、七月に絵を描いた。嘉手納案とシュワブ案だ」
政府関係者は明かします。このとき、普天間基地の新たな移設案は、この二案に絞られたといいます。(図参照)
総選挙後、メディアで一斉に報じられた案も、多くはこの二案の組み合わせです。
▽米空軍嘉手納航空基地(嘉手納町、沖縄市、北谷町)への統合
▽米海兵隊の基地と演習場であるキャンプ・シュワブ(名護市、宜野座村)に移設するまで、嘉手納基地に暫定統合
▽嘉手納案を断念し、キャンプ・シュワブに移設―などです。
シュワブ案では、(1)同基地内の陸上部分に滑走路など航空施設を建設、(2)同基地に接する、辺野古沖の海上リーフ(環礁)内の浅瀬に滑走路の規模を縮小して建設―という案が検討されているといわれています。(現在の辺野古沖への新基地建設案はリーフ上に建設)
■地元紙も酷評
しかし県内ではすでに、どの案にも強い反発の声が上がっています。
シュワブ案のうち陸上案について、県幹部は「そんな案は想定していない」と強調します。稲嶺恵一知事が現在の辺野古沖案を一九九九年に受け入れた際、「(周辺集落への)騒音の影響が懸念される」として拒否した案だからです。
名護市の岸本建男市長も「百パーセント反対」(「琉球新報」二十日付)と述べています。
リーフ内の浅瀬案について岸本市長は「受け入れる余地はある」(「読売」二十日付)と述べていますが、県は受け入れ条件としてきた「軍民共用」化が滑走路の規模縮小により不可能になるため強く反発しています。騒音や事故の危険、自然環境の破壊も深刻になります。
嘉手納案も、周辺自治体がこぞって反対しています。同基地では、米本土から展開してくる戦闘機などにより爆音被害が激化。模擬爆破装置を使った猛烈な爆発音による訓練被害も起こっており、県幹部も「全く受け入れられる状況にない」と断言します。
沖縄の地元紙は「検討にも値しない案ばかりが、なぜ次から次へと浮上してくるのか。内容がひどすぎて、議論のしようがない」「県民の要求とかけ離れた、はしにも棒にも掛からない移設案」(「琉球新報」十八日付社説)と酷評しています。
■無条件撤去こそ
もともとシュワブ案も、嘉手納案も、九六年の「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」合意で否定されていた案です。
日米両政府がつくったSACOは、普天間基地の移設先として、(1)シュワブ案(2)嘉手納案(3)現在の辺野古沖案につながる海上基地案―を検討。最終的に、シュワブ・嘉手納案に比べ、「県民の安全や生活の質にも配意」した「最善の選択」だとして海上基地案を打ち出したのです。
それにもかかわらず、辺野古沖案がゆきづまったからといって、ふたたびシュワブ・嘉手納案という「亡霊」(政府関係者)を持ち出してくる―。普天間基地の無条件撤去という県民の願いに逆らって「基地の県内たらい回し」に固執する路線が完全に破たんしていることを示しています。