2005年9月24日(土)「しんぶん赤旗」
―ドイツ総選挙―
仏大統領選にも影響
評価めぐり二分 社会党
サルコジ氏に「パンチ」
シラク派 正当化に利用
【パリ=浅田信幸】フランス政界では二〇〇七年春の大統領選挙に向けて候補者争いが熱を帯びつつあります。これにドイツ連邦議会選挙の結果が影響を及ぼしそうです。
余波をもろにかぶっているのは保守陣営でシラク大統領のライバルを自任するサルコジ内相(与党・国民運動連合党首)。「サルコジ氏に強烈パンチ」、「保守に警告」と各紙は報じています。
左翼勢力が「ウルトラ自由主義者」と呼ぶサルコジ氏は過去の保守政治との「決別」をセールスポイントにして、税制の単純化や労働契約の一本化をはじめとして社会モデルの抜本的改革を提唱。有力対抗馬とみられるシラク派ドビルパン首相の「社会的成長」論による漸進的な改革の推進に対して、違いを際立たせています。
ドイツの選挙ではサルコジ氏と同様に徹底した自由主義的改革を公約に掲げたメルケル氏の率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が、事前の予想を大幅に下回り、連合勢力である自由民主党を加えても過半数議席獲得はなりませんでした。
「メルケル氏の『改革』路線は、有権者に不安をかき立てる役割を果たした。サルコジ氏は『決別』をおおっぴらに振りかざすことによって、同じ危険を冒している」―リベラシオン紙はこう指摘します。経済紙レゼコーも「メルケル氏が収めた成績は、サルコジ氏から重要な説得手段を奪い去る」と言い切りました。
対するシラク派では「欧州諸国は自国の社会モデルと完全に決別した自由主義的改革に飛びつかない」(ボキエ議員)と漸進的改革路線の正当化に利用しようとの魂胆です。
他方の左翼勢力の側では、選挙結果をメルケル氏が代表する「徹底した自由主義路線に対する拒否」とみることでは完全に一致します。
しかし、欧州憲法の是非を問う国民投票で賛否が割れた左翼、とくに党内分裂が深刻化する社会党では、ドイツの社会民主党と左翼党の評価をめぐっても二分状態となり、大統領候補選びにまで手が回りません。
こうした中で共産党は今年、新入党員を七千人迎え入れ、欧州憲法ノン(反対)の「勝利」に続くドイツでの左翼党の前進できわめて意気軒昂(けんこう)。「全左翼の連合」を提唱し、自由主義路線への対案となる統一政策の作成をめざして論議の開始を呼びかけています。