2005年9月24日(土)「しんぶん赤旗」

奨学金

法的回収10倍化

学生支援機構が強化決定


 奨学金の貸し付けを行っている独立行政法人・日本学生支援機構(旧日本育英会)は、返還金滞納者への取り立てを強化し、法的措置の対象を、昨年度の約十倍の四千人まで拡大することを決定しました。

 法的措置をとる前には支払い督促予告をし、それでも支払わない場合には、裁判所への支払い督促を申し立てます。さらに無視をするような場合は、強制執行を行い、債権や給料などが差し押さえられます。

 昨年は一年以上返還を延滞した人のうち四百六十二人に対して支払い督促予告をし、二人に対して強制執行を行いました。

 同機構は「一年以上入金しなかった人で、払えるのに払わない悪質な滞納者に限って法的措置をとることにしている」と述べています。また、病気や失業、不安定雇用などの理由で返還が不可能な人に対しては、「返還猶予」の制度があるのでぜひ利用してほしいと話しています。

 奨学金は無利子の第一種と有利子の第二種があります。第二種は、一九九九年に採用条件を緩和して設けられ、利用者が大幅に増えました。今年度は一種と二種合わせて約九十九万三千人が利用し、総事業費は約七千四百億円にのぼっています。貸与者と貸与額が増えたことにより、昨年度は回収予定の二千二百九十七億円のうち五百七億円が回収できませんでした。

 しかし二〇〇三年五月八日の参院文部科学委員会で遠山敦子文科相(当時)が答弁しているように、一九四三年の奨学金制度創設以来〇一年度末までの要回収額累計は一兆七千六百三十一億円で、このうち一兆七千二百七十五億円が回収されています。回収率は98%で、滞納額がたまっているわけではありません。

 日本学生支援機構労働組合(学支労)の廣田治委員長は「〇四年の独立行政法人化に伴い、職員数が減っているにもかかわらず、貸与額の増加により仕事量は増えている。いままでやっていたような、返還者一人ひとりに対するきめ細かな対応ができなくなった。さらに民営化になって会計検査院の調査がきびしくなっている。こうしたなかで今回のような滞納者への法的措置という機械的な対応になってしまったのではないか」と話しています。


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