2005年9月24日(土)「しんぶん赤旗」
キヤンプ座間に陸自新司令部検討
米の戦争にズルズル
海外派兵の一大拠点に
在日米軍の再編問題で日本政府が、海外派兵を指揮する陸上自衛隊の新司令部を、米陸軍キャンプ座間(神奈川県)に置く方向で米側と検討していると報じられています。その問題はどこにあるのでしょうか。(榎本好孝)
キャンプ座間に設置が検討されている陸上自衛隊新司令部の名称は、「中央即応集団司令部」。防衛庁は二〇〇六年度に新設する計画です。
■長官の直轄部隊
「中央即応集団」とは、海外派兵をはじめ、テロなどあらゆる事態にすばやく対応するための防衛庁長官の直轄部隊。陸上自衛隊の「精強部隊」とされる第一空挺(くうてい)団(千葉県)や、第一ヘリコプター団(同)などの部隊で構成します。
新司令部はこうした部隊を指揮下に置くとともに、陸上自衛隊のすべての海外派兵の計画・訓練・指揮を一元的に実施することになります。海外派兵のための隊員教育や部隊訓練などを行う「国際活動教育隊」(〇六年度新設予定)も指揮下に置きます。
これまでの海外派兵では、派兵部隊が所属する各地方の方面隊と、中央組織である陸上幕僚監部とで計画や訓練などを行ってきましたが、準備期間に四―六カ月かかっていました。
防衛庁は、計画から訓練、指揮に至るまですべてを「中央即応集団司令部」に担わせることにより、海外派兵を「三十日以内」で可能にするとしています。
■多国籍軍司令部
一方、キャンプ座間へは米陸軍の第一軍団司令部(米ワシントン州フォートルイス)を移転する構想が、日米間の在日米軍再編協議で早くから検討されてきました。
第一軍団司令部は、アジア太平洋からインド洋とその周辺にわたる広大な地域を管轄している米太平洋軍に所属しています。米政府は、「ストライカー戦闘旅団」といった、世界の紛争地に数日内で展開できる最新鋭の部隊を指揮する新司令部(UEX)に衣替えして、キャンプ座間に移転しようとしています。
しかも、この新司令部(UEX)は、戦時には、陸軍だけでなく海軍・空軍・海兵隊も束ねた統合軍の司令部や、同盟国の軍隊などとつくる多国籍軍の司令部になることも想定されています。
米陸軍副参謀長のコーディー大将は「第一軍団のような軍団司令部は三ツ星(中将)が指揮し、戦時には、統合または多国籍の任務部隊の戦略司令部にもなる」(米軍準機関紙「星条旗」七月三十一日付)と言明しています。
キャンプ座間には、海外で米軍が中心になって引き起こす戦争のカナメになる司令部=“戦争の司令塔”が置かれようとしているのです。
■返還の願い逆行
在日米陸軍のパーキンス司令官は、キャンプ座間での新司令部(UEX)創設について「自衛隊の訓練や海外活動を支援することもできる」(四月七日、参院外交防衛委員会視察団に)と述べています。
大野功統防衛庁長官は今月十六日の記者会見で「中央即応集団司令部」をキャンプ座間に置くことについて「何ら決定していない」としつつ、「自衛隊の司令部、アメリカの司令部同士はなるべく距離の近い所にいた方が良いという考え方もあり得る」と述べています。
米陸軍の新司令部(UEX)に加え、「中央即応集団司令部」がキャンプ座間に置かれれば、陸上自衛隊の海外派兵態勢は一段と強化され、日米両軍が海外で共同の軍事作戦を行うことも容易になります。
イラク戦争に象徴される、米軍の無法な戦争に自衛隊はますます引きずり込まれていくことになります。
キャンプ座間は日米の海外派兵の一大拠点となり、地元自治体や市民が強く反対している基地の固定化・恒久化につながります。