2005年9月21日(水)「しんぶん赤旗」
国土交通省発注の船舶建造
9割以上で異常な高値落札
ツケは国民の税金に
国土交通省発注の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事の談合が問題となっていますが、同省が一九九七年度から二〇〇三年度までに発注した船舶建造工事八十九件でも、全体の94%にあたる八十四件で落札率(予定価格に占める落札価格の割合)は96%以上にのぼることが本紙の調べでわかりました。落札率100%が十七件に上るなど異常に高い落札率で、その結果の高値は税金でまかなわれます。
調査した八十九件の内訳は、二十四件が一般競争入札で、六十五件が随意契約。海上保安庁が使う警備船や巡視船などはすべて随意契約です。
会計法などでは予定価格が二百五十万円を超える工事や製造は競争入札にするのが原則となっていますが、海上保安庁の場合、「国の行為を秘密にする必要があるとき」という理由で、随意契約にしています。
随意契約では、落札率のもっとも低いものでも96・5%。100%は十三件もありました。
一般競争入札は形だけで、実態は随意契約というのもあります。
三菱重工業が約六十二億円で落札した浚渫(しゅんせつ)兼油回収船は、最初から競争相手はゼロで、落札率は99・9%。同じく三菱重工業が約九億円で落札した観測兼清掃船は、一回目の入札では四社が応じたものの、二回目では三菱以外が辞退。結局三菱との間で随意契約となり、落札率は99・9%となっています。同船は諫早湾干拓事業などの開発で環境の悪化が進んでいる有明海と八代海を清掃する「環境整備船」です。
また、二十四件の一般競争入札のうち、落札率100%のものが四件ありました。
東北地方整備局発注の巡視艇を落札した岡山市のトレーラーや小型ボート製造会社「ソレックス」は、予定価格千五百九十八万二千五百二十三円の船を、ぴったり同額の千五百九十八万二千五百二十三円で落札しています。
船舶受注企業の石川島播磨重工業には海上保安庁長官、三菱重工業には海上保安庁首席監察官が顧問として天下っています。一般に談合すると、落札率98%、99%が多くなることが、日本弁護士連合会などで指摘されています。談合の結果、高値の発注となり、そのツケは税金で支払います。
■落札率100%の国土交通省発注船舶建造契約
年度 件 名 受注企業 契約額
(万円)
1998 巡視艇 ソレックス 1598
1998 巡視船 日本鋼管 494550
1999 見回り船 墨田川造船 20685
1999 見回り船 石原造船所 26670
1999 特殊警備船 三井造船 138075
2000 浚渫兼油回収船 石川島播磨 1428
2001 浚渫兼油回収船 石川島播磨 367500
2001 見回り船2隻 墨田川造船 21105
2001 巡視艇 墨田川造船 16800
2001 巡視艇 墨田川造船 16800
2001 大型巡視艇 日立造船 69300
2002 大型巡視艇 三井造船 70229
2002 巡視艇 墨田川造船 15324
2002 大型巡視艇 墨田川造船 88641
2002 大型巡視艇 墨田川造船 83790
2002 中型巡視船 三井造船 167580
2002 大型巡視艇 石原造船所 83778
注=契約形態は一般競争入札および随意契約