2005年9月20日(火)「しんぶん赤旗」
主張
海外原爆展
核兵器廃絶の声を広げる力
五月の核不拡散条約(NPT)再検討会議にあわせて国連本部で「ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ展」が開かれました。主催したのは被団協(日本原水爆被害者団体協議会)で、広島、長崎両市が共催しました。この原爆展は、各国から訪れた多くの人々の心をうち、核兵器廃絶を求める声を広げる機会になりました。
■政府がもっと本腰を
国連本部で原爆展を見た人々から寄せられた感想文は、分厚いファイル二冊にもなりました。さまざまな国の言葉でびっしりと書かれた感想には、原爆被害の悲惨さにたいする衝撃の強さがあらわれています。
こうしたとりくみがアメリカをはじめ世界のいたるところで実施されれば、核兵器廃絶を求める声がさらに広がり、各国政府を変える力になるに違いありません。
被団協や広島、長崎両市は、費用負担など、困難な条件をかかえながらも、原爆被害の実相を世界に伝えるとりくみを進めています。
広島、長崎両市が海外原爆展にとりくむ契機になったのは、一九九五年のアメリカ・スミソニアン航空博物館の原爆展です。このとき、米議会や退役軍人などの圧力で、原爆被爆の悲惨な実態を示す内容が削除され、原爆投下機「エノラ・ゲイ」を誇示する展示になりました。原爆が人間に何をもたらしたのかを知ることなく、原爆投下を正当化するのでは、核兵器はなくせません。原爆についての正しい理解を広げるために、アメリカを中心にして海外原爆展を行うことにしました。現在までに、米英など十一カ国、二十六都市で原爆展を開催しています。
被団協は、被爆被害の写真と被爆者の証言を中心にしたパネル「原爆と人間展」をつくり、五十五カ国、二百以上の団体に普及しています。
原爆の実態を海外に広く知らせるために、日本政府は、もっと本腰を入れてとりくむべきです。広島、長崎両市は、毎年、「外務省が原爆展を主催してほしい」と要望してきています。その影響か、今年五月、厚生労働省所管の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館がアメリカ・シカゴの平和博物館で原爆展を開催しました。国の機関としては初めてです。
これを第一歩として、ひきつづき海外での原爆展などを積極的に開いていくことを求めたいと思います。国連本部での原爆展は、二〇〇一年に国連に提案してから四年もかかりました。政府が動けば、国連本部での原爆展開催も容易になります。
国連本部での原爆展開催を準備する過程で、国連担当者が、「むごすぎる写真は配慮してもらいたい」と注文をつけてきました。米国政府を刺激したくないという姿勢があらわれています。
今月九日、世界保健機関(WHO)と長崎大学が、WHO本部で原爆による放射線被害に焦点を当てた国際セミナーを開いたときも、WHOは、アメリカに配慮し、タイトルに「原爆」を明記しませんでした。
核兵器廃絶は人類共通の課題です。国連当局者も、それにふさわしい対応をすることが求められます。
■日本の役割が重要
核兵器廃絶運動が大きく広がる一方、ブッシュ政権は五年前の核兵器廃絶の約束をほごにし、非核兵器国をねらった核兵器先制使用計画を作成するなど、世界諸国民の核兵器廃絶の願いに背を向けています。
世界に被爆の実相を知らせ、核兵器廃絶運動の輪をさらに広げるために、日本の役割がますます重要になってきています。