2005年9月19日(月)「しんぶん赤旗」

登山の未来を語ろう

13年ぶり 労山フェスタ


 「ゆたかな登山とその未来を語り合おう全国の仲間と」をテーマに、17日から3日間の日程で八ケ岳のふもと、山梨県北杜市の清里高原で労山(日本勤労者山岳連盟)フェスタ清里集会が開かれています。労山が全国的な交流集会を開くのは1992年(東京)以来13年ぶり。山のふもとで行うのは85年(妙高・池の平)以来20年ぶりです。

 集会には北海道から長崎まで、36都道府県連盟から約150の山岳会、500人を超える会員が参加。分科会では会の運営からハイキングの事故防止、自然と共生する登山のあり方などについて学び、夜は遅くまで他県の経験に耳を傾けるなど、熱のこもった交流や研修が行われています。

 パネルディスカッションでは現役登山家、自然保護の研究者、ヒマラヤの専門家、山岳雑誌編集者が若い世代にどう登山を伝えるかが話題になりました。

 「山岳会の新しい役割と運営を探る」分科会では斎藤義孝理事長が総合山岳会の停滞などの問題を提起。「数十年後に登山団体が生き残れるかがいま問われている。会員だけでなく地域や未組織登山者の要求をくみ上げる組織への改革が必要だ」と語りました。

 和歌山・みちくさハイキングクラブ事務局長の小橋佳世さん(54)は「会の運営にかなり行き詰まっていました。『仲良しクラブは脱皮し、言うべきことは言う』など各会の知恵が参考になりました」と話していました。

 同集会は19日も分科会を続行、討論のまとめを行い閉会します。

■パネリストの発言から

 パネルディスカッション「明日の日本の登山を徹底討論」に出席したパネリストの発言を紹介します。

 小川潔さん(東京学芸大学助教授=農学博士) 個人がどういう登り方をするのか。昔やったような大自然と対決する登山はもうできない。高いレベルの登山と自然愛好と、境界を設けなくてもいいと思う。林道ができ車で入ってしまうので自然とのコミュニケーションが少なくなったのではないか。低山でも人のいかない山だとか地域に密着するなど、自分のスタイルで山に登ろう。

 廣川建司さん(山岳雑誌『岳人』編集長) 読者は50―60代が主体。自分たちはそんなにハードな山行をしているわけではないが、冬の剱岳の記事などが人気がある。自然の中に入っていれば、ハードなことをしなくても冒険心が理解できるのだと思う。山を見て温泉に入る、チョウを採りに入る、花を見にいくなどいろいろな部分に魅力がある。

 服部文祥さん(現役登山家) 連れていってもらうのは登山じゃないと思う。自分の内から行こうというエネルギーが出てこないといけない。困難な登山への挑戦が減っているなどといわれているが、道具に頼らず自分の力を高めることでフェアに登ろうとするフリークライミングの考えに一つの答えがあると思う。1999年から実践している現地にある魚や山菜を食料にする「サバイバル山行」は、これを夏山に当てはめようとしたもの。たき火を使い、電池で動くものは持っていかない。そこで培った技術は日高山脈全山単独縦走で有効だった。

 山森欣一さん(日本ヒマラヤ協会理事長) このままいけば登山の世界はツアー登山の旅行業に踏みにじられてしまう。登山が自分たちの時代の楽しみで終わってしまっていいのか。若い人に自然の素晴らしさを少しでも分かってもらえれば、「山岳部でやってみようか」ともなる。登山団体が大同団結し、国に働きかけて山岳ガイドを国家認定にする。そして、お金も出して高校山岳部の指導に当たるようにする。これしかない。


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