2005年9月19日(月)「しんぶん赤旗」
04年度日米共同演習で自衛隊
海外派兵にらみ実戦的に
二〇〇四年度の日米共同演習の内容をみると、海外派兵の「本来任務」化を目指す自衛隊が、米軍との演習のなかで、より実戦的な軍隊への転換を遂げようとしていることがうかがえます。
■市街地戦を重視
市街戦を想定した日米の都市型戦闘訓練は、北海道でも行われています。
〇五年二月から三月にかけ米陸軍と陸上自衛隊が、東千歳駐屯地などで実施した実動訓練では、戦車主体の第七師団が初めて、米軍教官から市街戦を学ぶ訓練を実施。自衛隊の準広報紙「朝雲」(三月十七日号)は「実戦経験のある米教官から直接学べる絶好の機会」と訓練の模様を報じています。
市街戦訓練を重視するのは、政府でさえ大規模侵略の可能性が低下したというもとで、小規模のゲリラ対処を重視するようになったこととともに、今後拡大をめざす海外派兵で、イラクのような市街戦が想定されるからとみられます。
また一月に米陸軍などと実施した日米共同方面隊指揮所演習「ヤマサクラ」(東千歳駐屯地)には、イラク戦争にも参加したとされる米軍の戦争評価の専門家グループ「戦闘指揮訓練計画」(BCTP)も参加しています。
■イラク戦と同じ
米空軍主催の多国間演習「コープサンダー」には、航空自衛隊のF15戦闘機のほか、E767空中警戒管制機(AWACS)も参加。在日米軍のワスコー司令官(当時)は「(自衛隊の)AWACSがもたらしたデータリンク画像は、地上基地を通じ、コープサンダー参加の全部隊に提供される」「イラク(戦争)でわれわれ(米空軍)が行ったのと同じだ」と述べ、米軍との一体化ぶりを評価しています。
空自も「コープサンダー」について「我が国では実施困難な実戦的環境下で、防空戦闘訓練等を実施し、日米双方の能力向上を図ることができた」(空自幕僚監部「日米共同訓練実施概要」四月)と強調しています。
■世界規模の訓練
米海軍は〇四年六―八月、七つの空母打撃群を太平洋、ペルシャ湾など五つの地域に同時展開させ、地球規模での戦闘能力を誇示する大規模演習「サマーパルス04」を初めて実施しました。同演習は、米国の先制攻撃戦略を具体化するものでした。
海上自衛隊は、「サマーパルス」の一環に位置付けられていた「リムパック」(環太平洋合同演習、六―七月)に、護衛艦四隻、潜水艦一隻からなる艦隊を参加させました。
「リムパック」とは別に、イージス艦「みょうこう」など護衛艦三隻が八月、「サマーパルス04」に参加していた米空母ステニスと沖縄周辺海域などで通信訓練などを実施しました。海自が、米軍の世界戦略に組み込まれていることを示すものです。
■一体化いっそう
自衛隊約一万一千三百人、米軍約四千四百人が参加した年間最大の日米共同演習「日米共同統合実動演習」(〇四年十一月)では、米軍がアジア太平洋地域に軍事介入する「周辺事態」を想定。陸海空の各作戦とともに、在外邦人を日本に輸送する訓練や、戦闘で遭難した米兵の捜索救助活動などを、陸・海・空の各自衛隊が一体となって実施しました。
百里基地(茨城県)では、空自隊員が発進準備中の米軍機にミサイルを搭載する訓練(「相互再発進準備訓練」)を実施しました。
防衛庁が情報公開請求で開示した同演習の「成果報告」は、防衛庁がめざす陸・海・空の各自衛隊を一元的に運用する態勢づくり(統合運用)にとって「その資を得ることができた」と評価。「日米安全保障体制の実効性を従来以上に向上させるためには、自衛隊の態勢を米軍の態勢に適合し得る態勢とすることが求められている」と、いっそう軍事一体化を進めたい考えを強調しています。
このほか統合幕僚会議は在日米軍司令部と、弾道ミサイルの発射の兆候から着弾にいたる情報収集・伝達・広報を訓練する「早期警戒情報等対処訓練」を実施しています。