2005年9月17日(土)「しんぶん赤旗」
主張
国連「成果文書」
公正な平和秩序の構築に向け
国連は創設六十周年にあたり首脳会議を開催しました。そこで採択する「成果文書」は、国連の今後のあり方を示すもので、今世紀に「公正で持続可能な平和」を樹立するミレニアム目標(二〇〇〇年国連首脳会議宣言)の促進のため、機構改革を含む諸課題を提起しています。
■重要な原則を確認
この間、米国の単独行動主義、とりわけウソの口実で先制攻撃を始めたイラク戦争にたいしては、国連憲章にもとづく平和秩序を守れという声がかつてなく大きく広がってきました。平和や地球環境の問題でも、貧困をなくすとりくみでも、世界の国々がどのように力をあわせていくかが問われています。
それだけに今回、国連加盟国が、国連憲章の諸原則、国連の中心的役割、紛争の平和的解決、多国間主義など、今日の国際関係を律すべき基本原則を一致点として確認したことは、重要な意義があります。成果文書は「国連憲章と国際法の目的と原則」を堅持して「世界中に公正で永続する平和を樹立する決意」を明確にし、「すべての国の主権平等」「領土保全と政治的独立」「武力による威嚇も武力行使も禁止」「自決権」「不干渉」を明記しています。
八月末になって多くの修正案を出すなど米国の合意破りと妨害がありましたが、それをおさえて一致点を確認したものです。
一方、核兵器廃絶を盛り込んでいた「軍縮」の項は、人類社会の生存のためぜひともはっきりさせておかなければならない課題であるにもかかわらず、すべて削除されました。五月の核不拡散条約(NPT)再検討会議と同じように、米国が反対に固執したためであり、アナン事務総長も遺憾の意を表明しています。
「開発」の章では、「貧困の根絶」や「持続的発展」のため、二〇一五年までに政府開発援助(ODA)を国民総生産比0・7%にする目標を再確認しました。「共通の環境」保全のため、温暖化防止の京都議定書を実施する必要があるとものべています。しかし、いずれも米国は拘束されないとしています。こういう後ろ向きの態度は改めるべきです。
「平和と集団安全保障」の章では、「さしせまった脅威にたいする先行的自衛」を安保理の承認がなくても認めるとした事務総長報告の提起を、米国が擁護したのに対し、厳しい批判が続出しました。米国のイラク先制攻撃戦争への、国際社会の広範な批判をあらわしています。
結局、成果文書で「先行的自衛」は退けられました。国連憲章を順守することによって、「紛争の平和解決」をはかり、「国際の平和と安全にたいするあらゆる脅威に対処できる」としています。米国の先制攻撃戦略を認めず、平和の国際ルールを守ろうとする確認です。
大量虐殺や「民族浄化」が起きたとき、国際社会にもその国民を「保護する責任」があるとする提起は残っています。新設される「平和構築委員会」「人権理事会」のあり方ともかかわり、「保護する責任」を一方的な軍事介入の口実にさせない明確な国際規範の確立が必要です。
信託統治理事会と「敵国」条項の記述を削除する方向のほかの、安保理の構成をはじめ国連機構の改革は今後の検討課題とされました。
■加盟国の責任
国連加盟国には、公正な国際平和秩序に向けた具体的な行動を積み重ねることが、強く求められています。日本が安保理改革にとりくむうえでも基本にすえるべき課題です。