2005年9月16日(金)「しんぶん赤旗」
9・11総選挙 選択とあす(下)
与党との対決軸
暴走政治止めるには
小選挙区で百七十議席獲得し比例代表も躍進して民主党政権を―「政権交代」を叫んだ民主党は、目標に程遠い小選挙区五十二、比例六十一の計百十三議席に終わりました。解散前から六十四議席減。実に三分の一の勢力が削られた形です。
岡田克也代表は敗北の責任を取り辞任表明。「何が起こったのかもはっきり分からない。何か言える状態ではない」(東京選出の落選議員秘書)とぼうぜん自失状態もあるなか、十七日の両院議員総会で新代表を選出することになっています。
■敗北の背景には
当事者は敗因をどう分析しているか。南関東選出の落選議員秘書は「この一年の民主のあり方に対する評価がじわっと効いてきた結果だ。国民が単純に魔法にかかっていたわけではない」と力なく語りました。
東京選出のある落選議員は郵政問題で「民営化では賛成だが法案には反対、それで対案を示せずあとから分かりにくい案を出すダッチロールになった」と分析。「この一年自民党に国会内で主導権を取られたままだった」ことも挙げました。
昨年参院選で議席数、得票数ともに自民党を上回った民主党は、岡田代表の訪米や財界との政策懇談、企業献金増額を求めての大企業回りなど「政権政党」を意識した動きを強めました。
今年二月には「政権準備政党」を宣言。政権を批判、監視する野党の役割とは別に「次の政権政党としての準備」を重視し、“野党”という言葉を使わないというものです。実際に通常国会では改悪介護保険法への賛成という「現実的」対応が見られました。
前出の秘書は「政権準備政党といって自民党支持者にアピールする戦略が国会対応と政策的線引きを規定し、民主党が役に立つのか国民に分かりにくくなっていた」と党の弱点を指摘します。
惨敗の結果を受け「政権準備政党」路線を見直すのか。前出の東京の落選議員は「政権準備政党という流れは基本的に変わらない。百議席を割りこむようだと『健全野党』という方向も出てきたが、現状では大きく変わらないだろう」とのべました。
当選した有力議員の秘書は「政権選択以前のところで勝負にされてしまった。政権準備政党なんて宣言はやめた方がいい」といいながらも「(自民党に)憲法問題を持ち出されたら『創憲』の立場を取る以上、乗らざるを得ないから、その点で軸は右に移動するだろう」と、引き続き自民党と改憲を競い合う立場を隠そうとしません。
衆院で68%の議席を占めた自公与党は早くも大増税や改憲策動の攻勢をかけています。年金目的消費税、各種控除廃止の増税、「創憲」を標ぼうしての改憲路線―自民党政治の枠内で政権だけ志向する「政権準備政党」が悪政に対抗できるのかが問われています。
■野党の存在とは
本連載を読んだ埼玉県の男性は電話で次のような感想を寄せました。「四年前の参院選で小泉さんの『改革』スローガンに共感して自民党に投票した。今回も国民のための改革と思った人は多いと思う。しかし冷静に考えれば、郵政民営化は国民のためでなく民間企業のためだ。今回は共産党に入れた。民営化に賛成といっている民主党はきっぱりいえなかった」
日本共産党の志位和夫委員長は十二日のNHK番組で、「郵政、大増税、憲法九条それぞれの問題で、選挙で掲げた野党としての公約実現のため『たしかな野党』として頑張る」と決意を表明しました。与党の暴走を食いとめ、国民の要求を実現させるために努力する「野党」の存在を国民は見つめています。(おわり)