2005年9月16日(金)「しんぶん赤旗」

主張

カネボウ会計士逮捕

株式市場の土台が腐っている


 カネボウの粉飾決算事件にからんで、監査法人大手・中央青山監査法人の四人の公認会計士が、証券取引法違反の疑いで逮捕されました。

 調べによると四人は、同法違反ですでに逮捕・起訴されているカネボウ元経営陣と共謀。債務が超過していたにもかかわらず資産超過と偽った有価証券報告書を作成し、監査報告書で「適正意見」を出しました。

 本来は決算に含めるべき赤字子会社を決算からはずし、財務を良く見せかける「連結はずし」など、粉飾の手口まで指南していました。

■「門番」が不正に加担

 企業の活動内容や経理情報を正しく開示することは、経済の重要な担い手である企業に社会的な責任を果たさせる上で極めて大切であり、一般の投資家が的確な投資判断を下すためにも不可欠の条件です。

 公認会計士は、企業会計の信頼を確保することによって会社の公正な事業活動や投資家保護などを図り、「もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命」(公認会計士法第一条)としています。

 経営情報が公正かどうかを専門家の立場で分析し、お墨付きを与える公認会計士は、資本市場における「ゲートキーパー」(門番)と呼ばれています。その門番が、みずから企業会計の粉飾に手を染めていました。

 アメリカ経済をゆるがせた巨大粉飾事件をほうふつとさせます。

 二〇〇一年にエネルギー大手のエンロンが一千億円を超える簿外債務の発覚をきっかけに経営破たん。〇二年には通信大手のワールドコムが四千億円を超える利益水増しで倒産しました。これらの事件では社外取締役や大手監査法人と経営陣との癒着ぶりが明るみに出され、最先端を誇ったアメリカの市場システムそのものに対する不信を広げました。

 会計監査を担当した「アーサー・アンダーセン」は当時、世界五大会計事務所の一角を占めていましたが、事件の責任を問われて廃業に追い込まれました。

 カネボウの調査によると、過去五年間の粉飾総額は二千億円以上に上ります。決算の粉飾はもっと以前から続けられていた疑いがあり、不正の総額はさらに膨らむ恐れがあります。粉飾の規模の点でも、大手監査法人の公認会計士が深くかかわっていた点でも、エンロン、ワールドコム事件に匹敵する深刻な事件です。

 小泉内閣は「官から民へ」「貯蓄から投資へ」の看板で郵政民営化を推進しています。しかし投資先の証券市場では、その土台をなす経営情報の信頼を根底から疑わせる事件が起きているのです。資金の流れを投資に振り向けたいというなら、まずやるべきは、庶民の零細な貯蓄を危険にさらすのではなく、正確な情報開示を確保し公正な市場を確立することです。

■財界甘やかしの姿勢が

 雪印事件、三菱ふそうのリコール隠し、コクド・西武鉄道事件、JR西日本の脱線事故―。利益第一で安全や社会的責任を踏みにじる重大な企業不祥事が相次いでいます。規制緩和・市場万能論で、とにかく民間に任せればいいという小泉内閣の姿勢が、企業倫理の崩壊と腐敗の促進剤となっています。

 アメリカがエンロン事件を教訓にして不十分ながらも企業改革法を成立させたように、経営者への罰則や監査法人への監視を強化し、情報公開を進めることは重要です。それと同時に、深刻な財政赤字にもかかわらず減税で大企業サービスを続けるような、財界甘やかしの政治を改めることが求められています。


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