2005年9月15日(木)「しんぶん赤旗」
9・11総選挙 選択とあす(中)
自民党の「純化」
財界直結の巨大与党
選挙後、初めて開かれた十三日の閣議。開始前の閣僚懇談会の席に小泉純一郎首相が現れると拍手が起こり、閣議の終了間際には複数の閣僚から「総理、おめでとうございます」との声がかかりました。
選挙を勝ちあがってきた互いの健闘をたたえあうのではなく、首相個人の「勝利」をたたえる――今回の選挙のありようを物語る場面でした。
今回の総選挙で与党は衆院で三分の二以上の議席を獲得。通したい法案は、たとえ参院で否決されても衆院で再可決できる「数の力」を手に入れました。
前国会で、郵政民営化法案否決の流れを決定づけたとされる中曽根弘文参院議員ら「造反」組も、選挙結果を受けてあっさりと変節。総選挙で当選した八十三人の新人議員は、首相の出身派閥・森派に相次いで入会を希望する状況です。誰も首相に逆らえない、自民党の「純化」が始まったかのようです。
■シナリオ後押し
首相のほかにも、予想以上の「圧勝」に笑いが止まらない人物がいます。日本経団連の奥田碩会長です。
開票から一夜明けた十二日の記者会見で奥田氏は、「郵政民営化法案を早く仕上げ、その他の『改革』をスピード感を持って進めていただきたい」とさっそく注文。「自民圧勝で、“経済界の意向をきかないでもやっていける”とならないか」との質問には、「そういうことは出てこないと思ってますけどね。経済界に冷たくすりゃあ次の選挙で仕返しされるとか、こんな話も出るかもしれん」と余裕の受け答えでした。
それもそのはず。小泉首相が六月ごろから練っていたという解散・総選挙シナリオを、強力に後押ししていたのが財界だったからです。
衆院本会議の採決で自民党から五十一人の反対・棄権者が出た七月五日。経済同友会の北城恪太郎代表幹事は、法案否決の場合は「解散がひとつの選択肢」だと発言。奥田氏も同月二十二日、日本経団連夏季フォーラムで「小泉総理は衆院解散に踏み切る可能性がある」と明言し、流れをつくりました。
そして、参院が法案を否決した八月八日。国会解散後、小泉首相が直行したのは港区のホテル・ニューオータニ。待ち受けていた奥田氏ら財界首脳陣に、総選挙での財界あげての自民党への支援を求めました。
日本経団連は公示前日の二十九日に自民党支持を正式表明。「民主王国」といわれた愛知県では、小泉首相が遊説で豊田市に来た際、張富士夫・トヨタ副会長が鉢巻き姿で出迎えて激励したのをはじめ、自民党候補の応援にトヨタの部長や工場長が応援演説に立つなど、まさに総がかりの選挙支援が繰り広げられました。
小泉首相が推し進めてきた“財界直結政治”を象徴しています。
■国民の目と落差
しかし、国民の見る目は違います。
全国紙は、選挙結果を受けて緊急世論調査を実施しました。「読売」十四日付は、首相が数を背景に強引な手法をとる不安について、63%が「感じる」と回答。その割合は、比例で自民党に投票した人に限っても48・9%にのぼります。共同通信社の調査では、首相が「国民に信任された」と豪語する郵政民営化法案についてすら「慎重に議論すべきだ」が53・4%と過半数。「特別国会で成立させるべきだ」の37・1%を上回りました。
今後、首相が率いる「巨大与党」と国民との矛盾が大きくなることは避けられません。