2005年9月12日(月)「しんぶん赤旗」

文科省、30人学級先送り

概算要求盛り込まず

首相と財務省の圧力に屈す


 文部科学省は二〇〇六年度概算要求で国としての三十人学級実施予算を盛り込まず、全国から強い要求のあった三十人学級の制度化は先送りとなることが確定しました。三十人学級実施に必要となる教職員定数の改善を検討していた同省の調査研究協力者会議(座長・高倉翔明海大学長)の中間報告(八月二十三日発表)を受けてのものです。

 今年二月に中山成彬文科相は、それまでの消極姿勢を転換し、少人数学級推進の意向を表明しました。公立の小中学校の少人数学級は四十五道府県に広がるなか、国として実施に踏みこむかどうかが注目されていました。

■一転、腰砕けに

 積極姿勢を見せた文科省は省内に「教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議」を五月に設置しました。ところがその中間報告(別項)は、小学校低学年の「三十五人学級」を推奨したものの、国の「四十人学級制」はそのままで、学級編成の権限を都道府県から区市町村・学校にうつす方向を示すにとどまりました。

 やった方がいいが、国としてお金は出さないという内容で、「いつまで安上がりの教育を続けるのか」(茨城新聞八月二十七日社説)などの批判の声があがりました。

 いったんは検討に着手しながら腰砕けとなった文科省。なぜこうなったのか。政府関係者は「首相官邸、財務省の強い圧力」を指摘します。

 少人数学級が中央教育審議会で大勢を占めた直後の六月一日、小泉「構造改革」の司令塔となっている経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)が開かれました。会議には中山文科相、鳥居泰彦中教審会長が呼び出されました。席上、鳥居会長は「小一、二は三十人学級」を主張。諮問会議議員からは「一律三十人学級という話は今の時代からするといかがなものか」(麻生太郎総務相)などの発言が相次ぎました。このなかで中山文科相は少人数がよいと実は思っていないとのべ、後退します。

■「小さな政府」論

 その五日後、財務省の財政制度等審議会は「平成十八(二〇〇六)年度予算編成の基本的考え方について」を公表しました。このなかで教育について「総人件費抑制の観点から厳しく見直しを進める」「少人数学級編成等のため教職員を増員することを教育水準の向上と同視するといった安易な発想は排し」とのべ、少人数学級反対をかかげました。

 官邸や財務省の強行姿勢の背景には、小泉首相が叫ぶ「小さな政府」論があります。財界が「民間企業が総人件費を抑制している中、国や地方自治体はそれ以上の厳しさで公務員の総人件費削減を」(奥田碩・日本経団連会長ら、二月二十八日の経済財政諮問会議で)と主張しているテーマです。実際の日本の国と地方の公務員数は欧米より少なく、政府内でも「極めて小さな政府を人件費の上でも実現している」(同会議、麻生総務相)と認めています。

 こうした正論を引っ込めて国の財政危機を口実に、国民に必要なサービスを小さくし、必要な財政支出も認めない―少人数学級を通じても「小さな政府」論の反国民性が浮かび上がっています。

■30人学級は実現が可能

■日本共産党の提案

 三十人学級は一つの教室で学ぶ児童・生徒数を三十人以下にする仕組みです。三十人を超えると二つの教室に分かれ、教員も二人必要となります。教員の増員を確保するための予算が必要になります。日本共産党は六日、公立の小中学校の学級編成の標準を現行の四十人から三十人に引き下げ、来年度から段階的に実施し五年後に完成する「三十人学級法案要綱」を発表しました。必要な予算は、初年度百五十六億円で完全実施となる二〇一〇年度は五千八百億円(国、地方が半分ずつ負担)。予算のムダ遣いを改めることで実現可能な提案です。

■教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議・中間報告(要旨)

 我が国の教員定数は、未だ世界水準に達している状況にない。30人学級は財政負担の観点から可能性が低い。

 【学級編成の改善】

 (1)学校や市町村教育委員会の権限と責任を強化する。具体的には▽教員の標準定数算定を都道府県ごとから市町村ごとにする▽一学級40人を上限とするとともに、学校現場の判断で学級編成が弾力的に実施できるよう制度を見直す。

 (2)少人数学級を自由に選択できる制度とする。

 (3)市町村教育委員会と、教職員の人事・給与負担・定数管理について責任を有する都道府県との密接な連携が必要。

 【教職員定数の改善】

 生活環境や学習環境が変化する小学校低学年の場合、生活集団と学習集団を一体として少人数化をはかることが効果的と考えられ、35人学級などが可能となる教職員配置とすべき。

 【その他】

 どのような指導形態・方法が効果的かについて専門的見地から見極めるため、少人数指導、少人数学級に関しデータ収集・分析に努める。


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