2005年9月12日(月)「しんぶん赤旗」
主張
9・11から4年
理性働かせ暴力の連鎖絶とう
米国での二〇〇一年九月十一日の同時多発テロ事件から四年がたちました。ニューヨークの世界貿易センタービルとワシントン郊外の国防総省に乗っ取り機が突っ込み、ペンシルベニア州にも一機が墜落して、約三千人が犠牲になりました。そこには日本人も含まれています。各地で追悼の行事が行われています。
多数の市民の命を無差別に奪うテロは、どのような理由をつけても絶対に許されない卑劣な犯罪行為です。9・11テロは、米国だけでなく国際社会全体、世界の法と秩序に対する攻撃でした。テロの根絶は、人類が地球上で平和に生きてゆく根本条件のひとつになっています。
■憎悪と復しゅうではなく
どうすればそれができるでしょうか。憎悪と復しゅうの感情のままに、軍事力で報復することで解決できるでしょうか。四年間の経過から、答えははっきりしています。
ブッシュ米政権は、テロの首謀者をかくまっているとしてアフガニスタンを軍事攻撃し、タリバン政権を崩壊させました。しかし、いまにいたるも首謀者はつかまらず、米軍は掃討作戦を続けています。この間に、何の罪もない多くの人々が戦争の犠牲になりました。
もっぱら軍事力を使うことでは、テロを根絶できません。
夫を9・11テロで失ったアンドレア・ルブランさんはこの夏、長崎から広島へ、テロと戦争の犠牲者を追悼して行進し、こう語りました。
「私たちは憎しみを選択しませんでした。不信と憎悪は、新たな暴力を生み出すだけだからです」「復しゅうでは解決しません。暴力の連鎖は断ち切らなければなりません」
テロ犯罪をなくしていくには、法と理性にもとづく解決が必要です。なすべきは、テロ犯罪の容疑者と組織、支援者を逮捕し、裁判にかけ、法にてらして厳正に処罰することです。国連を中心に、国連憲章と国際法にもとづき、国際社会が力をあわせなければなりません。
ところが米国は、アフガンへの報復戦争からイラクへの先制攻撃戦争へと突き進みました。
自国が攻撃を受けていないのに、勝手に武力攻撃することを、国連憲章は禁じています。イラク戦争は無法な先制攻撃の侵略戦争であり、国際平和秩序を踏みにじり、テロ根絶のための国際社会の団結を破壊しました。
ブッシュ政権は、イラクの旧フセイン政権の“脅威”として大量破壊兵器の保有とアルカイダとの結びつきをいいたて、イラク戦争を強行しました。ふたつの口実ともうそであったことは、国連と米国自身の調査によって明白になっています。
国連安保理決議もなく、国際社会の圧倒的な批判があるにもかかわらずイラクに攻め込んで、テロの策動の余地を広げたのは米国自身です。
米国内でも、「イラク派兵は間違いだった」が54%(ギャラップ社調査)と世論の多数になっています。「あなたのうそで息子は死にました。意味のわからない戦争のためにあと何人の息子が死ぬのでしょう。間違いを認め、すぐに軍隊を撤退させるべきです」(息子がイラクで戦死したシンディ・シーハンさん)と、兵士の家族も声をあげ始めました。
■平和の秩序にもどれ
「テロとの戦争」(ブッシュ大統領)の名での無法な軍事力行使は、テロと暴力を拡大するだけです。テロを根絶してゆくためにどうしても必要なのは、国連憲章にもとづく平和の国際ルールを守ることです。