2005年9月10日(土)「しんぶん赤旗」
イラク 人権侵害続く
国連報告 拘束・拷問 後絶たず
米軍事作戦やテロを非難
【ワシントン=浜谷浩司】国連イラク支援派遣団(UNAMI)は八日、八月末までの二カ月間のイラクの人権状況に関する報告を公表。反政府武装勢力によるテロを非難すると同時に、イラクの軍・警察と米軍を中心とした多国籍軍による人権侵害が引き続いていることに強い懸念を示しています。
報告は、イラク治安部隊の活動に関連して「法によらない処刑」や「過度の武力行使」、虐待や拷問などの訴えが届いていることを、事例を挙げて指摘しています。
八月二十五日にはバドラ近郊で三十六人の男性の遺体が発見されました。いずれも手錠や目隠しをされ、拷問のあとがありました。犠牲者の家族によると、前日にバグダッド市内で内務省関連の部隊によって拘束されたといいます。
七月十日にはバグダッド市内で十一人の男性が同様に拘束され、三日後に遺体で発見されました。
また、バグダッド、バスラ、モスル、キルクークなどでは、警察署や内務省施設での尋問に際して「拷問が組織的に行われている」ことを示す情報があるといいます。
内務省は八月三日、家宅捜査などにあたって法を守るようにとの指示を出したものの、指示が守られていないとの訴えが続いています。
アンバル州などイラクの中部や北部で米軍とイラク治安部隊が実施している武装勢力掃討作戦では、住民が強制退去させられるとともに「違法な非通常兵器」が使用され、「懸念を強めている」としています。
警察や内務省治安部隊、多国籍軍による軍事作戦では、多数の人々を一括拘束する事例が後を絶ちません。拘束された人々の行方が分からない場合も多く、拘束中に死亡したり拷問を受けたケースも報告されています。
一方で、七月十七日にはバグダッド南部で燃料トラックが爆発し、九十八人が死亡、百五十人余が負傷しました。七月十三日にはバグダッド市内でパトロール中の多国籍軍部隊が攻撃され、三十人の市民が巻き添えとなって死亡。その多くは子どもでした。
報告は、テロを重大な人権侵害として非難し、武装勢力が国際法に定められた義務を果たすよう要求しています。