2005年9月10日(土)「しんぶん赤旗」
民主が衆院比例削減案の国会提出表明
多様な民意を切り捨て
政党助成こそムダづかい
民主党が、来年の通常国会に衆院比例代表の定数を八十削減する公職選挙法「改正」案を提出すると表明したことは、民主主義の根幹にかかわる大問題です。
いま衆院の四百八十議席のうち三百議席は小選挙区、百八十議席が全国十一ブロックごとの比例代表で選ばれています。
一選挙区から一人の議員を選ぶ小選挙区制は、大政党に有利で、議席に結びつかない「死票」の多い制度。一方、比例代表は、政党の得票に応じて議席を配分するもので、いまの選挙制度では唯一、民意を正確に反映する部分となっています。
民主党の主張どおり、比例部分を八十削減すれば、総定数に対する小選挙区の比重は62・5%から75%になります。民意を正しく反映できないゆがみをいっそう高め、多様な民意を切り捨てることになります。これでは、比例代表で議席を得ていた少数政党が締め出されるおそれがあります。さらに、比例代表自体も、一挙に八十も削減してしまえば、定数が三、四という“中選挙区”並みになるブロックも出てきます。これでは、比例代表選挙の役割は果たせません。
民主党は総選挙マニフェスト(政権公約)の重点八項目の冒頭でも「ムダづかい一掃」として比例定数八十削減を掲げています。今回の法案提出の表明はこれを具体化したものですが、比例定数削減の本当の狙いは「ムダづかい一掃」などではありません。
同党の井上和雄氏は「少数政党が比例で議席をとり、国会に出てくるから政治がわかりにくくなる」(八月二十五日、東京青年会議所の公開討論会)と発言。安住淳候補(宮城5区)も「少数政党に鼻面を引き回されて、本当に公正なのか」(八月二十五日、石巻青年会議所主催の公開討論会)と、日本共産党はじめ少数政党の締め出しにこそ狙いがあることをあからさまに語っています。
「ムダ」という口実をみても、八十削減で“節約”できるのは約五十八億円です。「ムダづかい一掃」というなら、日本共産党以外の政党で山分けしている年間三百十七億円の政党助成金こそムダです。山分けが始まった一九九五年から十年半で自民党には千五百四十八億円、民主党には六百七十九億円、社民党には二百七十三億円、公明党には二百四十億円も国民の税金が入りました。民主党の場合、実に収入の84・6%が政党助成金です(〇三年)。「官から民へ」どころか「官製・国営政党」です。
こういう税金を平気で浪費する政党が、人為的に選挙制度を変えて、少数政党を追い出そうというのは暴挙以外の何ものでもありません。
(高柳幸雄)