2005年9月5日(月)「しんぶん赤旗」
ハリケーン被害拡大
対策機関リストラ・民営化
ブッシュ政権に批判
【ワシントン=山崎伸治】大型ハリケーン「カトリーナ」のもたらした被害へのブッシュ米政権の対応をめぐり、災害対策の調整役となるべき連邦緊急事態管理庁(FEMA)が同政権下でリストラされ、業務の一部が民営化されてきたことに、改めて批判の目が集まっています。
FEMAは一九七九年に設置されて以来、閣僚級の長官が率いる独立した政府機関としてホワイトハウスに直結していました。しかし二〇〇一年の対米同時テロを受け、〇三年三月、テロ対策を統括する国土安全保障省に統合され、その下部機関の一つとなりました。
米誌『インディペンデント・ウィーク』〇四年九月二十二日号によれば、ブッシュ氏は〇一年の就任以来、FEMAを軽視してきました。
長官には、ブッシュ氏の選挙参謀で危機管理には素人のアルボー氏を起用しました。同氏は〇一年五月の議会証言で、FEMAが各州に対して行っている災害支援について、「肥大化した受給事業になっており、州や地方自治体の危機管理を促すものになっていない」として、削減する意向を表明。事業の民営化を進めました。
大型災害に備える支出の連邦政府負担分を75%から50%に削減する案は議会に否決されたものの、自然災害の被害を最小限に抑える事前措置事業は廃止されました。
国土安全保障省に統合されてからは、優先課題は自然災害から対テロ対策に変わりました。予算は六十六億ドルに倍加されましたが、三十五億ドルはテロ攻撃に対する装備と訓練にあてられました。
こうした機構上の再編に嫌気がさした自然災害対策の専門家がFEMAを退職して、危機管理の会社を設立。FEMAが外注する事業を受注するという皮肉な結果も生まれているといいます。
■すべて失った…もう戻れない
■避難民
大型ハリケーン「カトリーナ」で被災し、テキサス州ヒューストンの競技場アストロドームに避難してきた人々のなかには、もうニューオーリンズへは戻れないとの声が出ています。三日のロイター通信は、ヒューストンから被災者の不安の声を伝えています。
奪ったボートで家族を高台に避難させ、ヘリコプターで救出されたケントレル・ヒルさん(23)。他の貧しい黒人の避難民と同じように、もうニューオーリンズには戻らないと語りました。コーヒー工場の労働者だったヒルさんは、電気技師の資格を取り、ジョージア州アトランタかテキサス州ヒューストンで仕事がしたいと話しました。
復興には数カ月かかるとも言われることから、多くの人々は、数世代にわたって暮らしてきた市から永久に離れることを余儀なくされています。
ヒルさんの話に同調するジェフリー・ジョセフさん(49)=トラック運転手=は、「どこに戻れというんだ。家はなくなった。すべて失ったんだ」と訴えました。ジョセフさんは、ハイチから移住してきた曽祖父母の代からニューオーリンズに住んでいました。
別居を選ぶ家族も出てきています。ダーレイン・ホイーラーさん(43)は「ニューオーリンズを離れるのはとても寂しい。私は戻ります」と話します。母親のルビーさんのいとこの家では十七人が亡くなりました。ルビーさんは「戻って住むつもりはないわ。すべて水に漬かってしまって、戻っても何もないじゃない」と語りました。ルビーさんは、避難以来、夫とはぐれてしまいました。