2005年9月5日(月)「しんぶん赤旗」

戦後60年 アジアから見た戦争犯罪

“日本では殺人者が英雄?”


 【ハノイ=鈴木勝比古】戦後六十年企画の一環として今夏、六十年前に日本軍占領下で起きたベトナム北部の二百万人餓死問題や、日本軍の東南アジアでの侵略と蛮行について現地取材しました。

 八月二十七日付のサイゴン・ザイフォン紙は一面に、当時の餓死の写真を大きく掲載し、四面で一ページの特集を掲載しています。

 その中で歴史学者のバン・タオ教授は「この惨事を引き起こした連中はいまだに、死んだのは多くても三十万人ぐらいとみなしている」と怒っています。

 同氏は、一九九〇年代前半、ベトナム・クアンチ省以北の二十三カ所で餓死者についての大規模な調査を実施しました。「調査した場所の人口に対する餓死者の比率がわかり、死亡した餓死者の総数の比率を比較的正確に割り出すことができた」「この惨禍の悲劇性は数字にとどまらない。より深刻で真実性があり恐怖を覚えるのは、生き残った人々の証言の中にある」と強調しています。

 日本がアジア各国を侵略したことを認めず、「自存自衛」の戦争であったと言い張る人々にとっては、中国の南京大虐殺も、シンガポールの「大検証」(中国系住民を対象とした虐殺)も、ベトナムの飢餓も誇張か、日本軍兵士の「部分的な行き過ぎた行為」にすぎません。

 東京・靖国神社の遊就館には、アジア各国の犠牲者の証言はまったく見当たりませんでした。こうした人々の意図は「日本軍が引き起こした損害より、与えた恩恵のほうが大きかった」として、この侵略戦争を肯定することにあります。

 しかし、今回の現地取材では、いたる所で身内を殺された家族、日本軍による虐待を体験した人々に出会いました。

 「日本では、たくさんの人を殺した者ほど英雄になれるのですか? 戦後まもなく陸軍参謀だった辻政信が参議院議員に高位当選したことを知ったときにはびっくりしました。彼はいったい、シンガポールでどれほど多くの人を殺したか知っていますか?」―孫文記念館「晩晴園」の馮仲漢館長(76)は記者にこう問いかけました。

 ベトナムでは今年、餓死者追悼式典が盛大に行われました。そのテレビ放映を見ながら、日本が過去の歴史の教訓を生かす道、アジア各国の人々と手を携えて平和の道を進むことの大切さを痛感しました。


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