2005年9月3日(土)「しんぶん赤旗」
社会保障財源 庶民増税なしでまかなえる
大もうけ・大減税の大企業に応分の負担を
これだけの根拠
財界は、年金などの社会保障の財源をつくるには、個人所得税の控除見直し(サラリーマン増税など)や消費税増税は避けられないかのようにいっています。自民、公明の小泉与党や民主党も同調しています。そうでしょうか。日本共産党は庶民増税に頼らなくても財源は生み出せると主張しています。
|
関心の高い年金を例にとって考えてみましょう。日本共産党は、「最低保障年金制度」を提案しています。厚生年金、共済年金、国民年金の共通の土台として、全額国庫の負担による最低保障を月額五万円からスタートさせ、そのうえに、それぞれの掛け金に応じて、給付を上乗せする制度です。
五万円の最低保障を実現するために必要な財源は、国庫負担を二分の一にするための二・七兆円のほかに、あらたに約五兆円が必要です。
ガソリンにかかる揮発油税や、自動車重量税にかかる道路特定財源は、国の分だけでも三・四兆円あります。これを一般財源化し、社会保障にもつかえるようにすることをはじめ公共事業費など歳出の見直しで、二・七兆円の財源は確保できます。
五兆円の財源を確保するためには、歳入の見直しも必要です。大企業減税や大金持ち減税を見直し、法人税に緩やかな累進制を導入することなどで、安定した年金財源を確保することができます。そのさい、中小企業の負担が現在の負担より重くならないようにすることは当然です。
■企業負担 仏の2分の1
|
日本の企業の税と社会保険料の負担は、フランスの二分の一、イタリアの六割、ドイツの八割にすぎません。ドイツ並みにするだけで、七兆円以上の財源が確保できます。
トヨタ自動車が世界の製造業ではじめて二年連続で一兆円を超える純利益をあげるなど、東証一部上場の大企業の三分の一が最高益を更新(経常利益、二〇〇五年三月期決算)しています。「膨らみ続けるカネ余り」と経済誌(『エコノミスト』三月二十九日号)に書かれるように、企業の余剰金は〇四年の一年間だけで十六・二兆円も発生し、八十二兆円にも積み上がっています。企業の負担を増やすと国際競争に負けるなどという財界や政府のいい分は通用しません。「所得や資産に応じて負担する」という原則にたちもどるときです。
■欧州は社会保障費が中心
|
社会保障費が予算の中心にすわるのは欧州では当たり前のことです。
ところが、日本では公共事業が突出しています。一九九〇年代には、十年間で四百三十兆円の公共投資(後に六百三十兆円)という対米公約もあって、日本では国と地方の予算が社会保障に二十兆円、公共事業に五十兆円という異常な事態となりました。
いまでも、福祉、教育など国民生活関連をのぞく公共事業費が国内総生産(GDP)に占める割合を比べると、日本は依然として欧米諸国の三倍から十二倍です。
このゆがみをただすことは、社会保障の財源づくりにも、「世界一の借金大国」から脱出することにもつながります。
■企業のカネ余りに着目
■「法人増税という選択肢」
経済学者も企業の「カネ余り」に着目。「法人課税の強化は、企業の国際競争力に悪影響を与えるということで、従来は反対が強かった」が、企業がフリーキャッシュ(余剰金)を抱え込んでいるような状況で「本当にそうした議論が妥当するものなのだろうか」「法人増税が選択肢からあらかじめ排除されうるものではない」(池尾和人慶応大学教授、『週刊東洋経済』八月二十七日号)と指摘しています。
■共産党の主張にアナリストも注目
日本共産党の提案に、経済アナリストも「共産党は大企業と金持ちから税金を取れと主張しており、弱者への視点として注目している」(森永卓郎氏、「東京」九月二日付)とのべています。
■増税は大企業負担軽減狙い
|
財界が消費税増税を迫るのは、大企業の負担を軽減したいからです。
財界の要望にそって法人税は相次いで減税されてきました。消費税が導入(一九八九年四月)される前年の八八年度と比較すると、年間の法人税の減収は十二兆円近く。これを、消費税の年間税収約十二兆円で穴埋めしている形となっています。
財界が消費税について「二〇〇七年度10%」(日本経団連)などと増税を求めるのも、法人税をさらに減税し社会保険料の企業負担も軽減させて、消費税で穴埋めさせたいからです。日本経団連会長の奥田碩トヨタ自動車会長がまとめた「奥田ビジョン」(〇三年)では社会保険料の企業負担分をなくすことまで提言しています。
■財界にものが言えてこそ
日本共産党が、消費税増税にきっぱり反対し、大もうけをしている大企業に、もうけ相応の負担をという当たり前のことを要求できるのも、財界・大企業から献金を一円ももらっていない政党だからです。財界に「政党通信簿」をつけてもらい、企業献金を受けている自民党や民主党は、消費税増税でも財界の要望にそって競い合いをしています。