2005年9月1日(木)「しんぶん赤旗」

主張

大型公共事業

国民と共にムダ遣いをなくす


 小泉内閣が推進する熊本県の川辺川ダム建設と長崎県の諫早湾干拓事業をめぐって、行政委員会の決定が相次いで出されています。

 川辺川ダム建設については、熊本県の収用委員会が国土交通省にたいし、漁業権の収用申請を取り下げるよう勧告しました。二十二日までに取り下げるかどうかの回答がなければ、申請を却下するとしています。

■破たんしても止まらず

 国が川辺川ダムの目的の一つにあげていた利水は、もはや合理性がありません。利水事業の対象農家の半数が、「ダムの水はいらない」と裁判を起こし、福岡高裁で二〇〇三年五月、国の計画は違法とする、勝訴判決をかちとっています。判決は国の上告断念で確定しました。

 漁民は、ダム建設が特産のアユ漁に打撃を与えるとして、建設反対の明確な意思を示しています。国が漁業権を強制的に取り上げるために、収用委員会に申請(〇一年十二月)を行い、強権的につぶそうとするのは不当です。

 政府は、勧告に従い、漁業権の強制収用の申請を取り下げ、ダム計画も中止すべきです。

 長崎県の諫早湾干拓事業については、国の公害等調整委員会の裁定がありました。有明海の漁業被害との因果関係の認定を求めた漁民側の申請を却下する不当な結論です。ノリ養殖や二枚貝のタイラギ漁などの不作・不漁被害を認めながら、「客観的データの蓄積や科学的知見の面でなお不十分である」として認定を避けました。同時に、「干拓事業が有明海における漁業被害に対して影響を及ぼした可能性を否定するものではない」としてさらなる調査・研究を国に求めました。

 客観的なデータの蓄積を拒んできたのは小泉内閣です。ノリ不作などの原因を調査した農水省の第三者委員会が〇一年十二月に提言した中・長期の開門調査を、政府は拒否して、事業を推進してきました。

 本来の責任を果たしていない裁定ですが、事業にお墨付きを与えたのではなく、開門調査をサボってきた小泉内閣への警告です。

 必要性のなくなった大型公共事業を「聖域」扱いする小泉内閣の強引な手法にたいして、地元をはじめ国民の「環境を守れ」「無駄遣いをなくせ」の運動が広がっています。

 日本共産党は、地元の漁民・農民、市民とともに、ムダで環境破壊の大型公共事業に反対してきました。

 小泉首相が就任直後の〇一年五月、日本共産党の市田忠義書記局長は参院の代表質問で、現地調査をもとに、「治水や農業用水という目的自身が既に破たんしたのに、それにしがみついて、おいしいアユと日本一と言われる清流、そして球磨川下りを台無しにするのですか」と川辺川ダム建設の計画の中止を迫りました。

■諸外国と比べ高い水準

 小泉首相は「農業用水を確保するためにも必要であります」「今後とも完成に向け努力をしていきたい」とこたえました。四年たったいま、環境を守り、ムダをなくすために努力してきた日本共産党に道理があったことが改めて実証されました。

 小泉内閣は、公共事業費を減らしているといいますが、文教・福祉施設を除いた公共事業費のGDP(国内総生産)比は、イギリス0・3%、フランス1・3%、アメリカ、ドイツ1・0%にたいし、日本は3・7%です。国民とともに大型公共事業のムダ遣いにメスを入れることができる日本共産党の出番です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp