2005年8月31日(水)「しんぶん赤旗」
総選挙第一声
小泉首相がすすめた「改革」こそ「特権階級利益優先」の政治
実態みれば明らか
小泉純一郎首相は総選挙の第一声で、郵政民営化に反対することは「一部の特権階級の利益を守ること」だと決めつけ、賛成派こそ「既得権」を打ち破る「改革」勢力だと描き出しました。しかし、実際に「特権階級の利益を守る」政治をすすめてきたのはだれか、小泉政治の実態を見ると――。
■郵政民営化は財界・大銀行の要求
郵政民営化こそ国民から出た要求ではなく、庶民の虎の子の生活資金を新しいもうけ口にしたいという日米の銀行と生保業界の要求が発端です。
銀行協会は、「郵便貯金事業を廃止することが望ましい」(二〇〇四年二月の提言)などと毎年のように民営化を要求してきました。
政府の郵政民営化準備室に職員を送りこみ、法案づくりに直接関与してきたのも、銀行協会と損害保険協会です。
政府の民営化準備室は昨年四月以降、米国政府や保険業界の関係者と十八回も意見交換を重ねています。今年三月に米通商代表部(USTR)が出した報告書には「内閣の設計図には米国が勧告していた次のような修正点が含まれた」として、四点を列挙しました。
小泉首相自身、大蔵政務次官や大蔵委員長を務めた「大蔵族」として、こうした銀行業界の要求を代弁してきた政治家です。
首相のいう「小さな政府」とは「官が民の邪魔をしない政府のことです」(自民党政策資料)。つまり、財界・大企業のもうけの邪魔になる郵貯・簡保をつぶしてしまおうというのが民営化の本質です。
しかも、郵政職員がどうして特定階級なのでしょう。
全国津々浦々に均一・低料金で郵便を届け、どんな離島や過疎地でも、どんな職業でも差別なく貯金・保険のサービスを提供する――「民間にできる」どころか、民間にできないことをやっているのが郵政職員です。
しかも、郵政事業は独立採算で職員の人件費含めて国民の税金は一円も使われていません。
■国民に痛み大企業を応援
小泉首相が肩入れするのは銀行・生保業界だけではありません。大企業・財界という特権階級を応援する政治でした。
国民は、大企業のリストラと「不良債権処理」を応援する政治のもとで中小企業の倒産とリストラ・失業増大をはじめ、年金、医療、介護など社会保障の大改悪などすさまじい痛みを強いられ、家計所得は四年間で十八兆円も減りました。
ところが大企業などは十二兆円ももうけを増やしました。大企業各社は史上最高の利益を上げ、余剰資金は八十二兆円にも積み上がっています。
庶民から吸い上げて財界をもうけさせる――ここに小泉改革の正体がはっきり見えています。
しかも、「痛みに耐えれば希望ある明日がくる」といいながら、見えてきたのはサラリーマン増税と消費税増税という空前の大増税計画です。
国民に犠牲を強いて財界・大企業の負担を減らす計画は、財界・大企業が描いたものです。
日本経団連の「奥田ビジョン」(二〇〇三年)は、社会保障給付の削減を求める一方、庶民増税や消費税を16%に引き上げ、法人税は減税し、企業の社会保障負担を減らすよう求めています。
自民党がマニフェストで二〇〇七年度をめどに「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」と書いているのも、この要求を受けたものです。
もともと財政赤字をつくった主な原因は、財界が求めた公共事業の大盤振るまいや、大企業・大金持ち減税にあります。大企業の払う法人税は減税に次ぐ減税などで八〇年代の二十兆円から十兆円まで大きく減っています。
その穴埋めに庶民に大増税を押し付けられてはたまったものではありません。
小泉首相が「官から民へ」という「民」は国民ではなく、民間大企業の「民」なのです。
■世界でも異例のアメリカ絶対
小泉政治は、アメリカいいなりという点でも、これまでの自民党政治を極端なものにしました。
そもそも首相が総選挙の目玉にする郵政民営化自体が、「競争相手」である郵貯・簡保を邪魔者扱いにする米国の要求に応えたものです。昨年九月に訪米した小泉首相は、ブッシュ米大統領に郵政民営化を約束までしました。
アメリカの同盟国でもイラク戦争にドイツ、フランスなどが強く反対したように、世界でアメリカいいなりの態度を続けている国は少数です。そうしたなか、小泉政権は“同盟国だから”という理由だけで、戦後初めて戦闘地域のイラクに陸上自衛隊を送り込むなど、アメリカ絶対の態度をとっています。
米英が始めたイラク戦争には、もともと世界の政府の約七割が公然と反対。イラク駐留の多国籍軍に参加した「有志連合」も、当初でも三十八カ国にすぎず、今では十八カ国にまで減っています。
「有志連合」が崩れつつあっても、自衛隊の派兵継続に固執する小泉政権の異常さは、世界でも突出しています。
しかも自民党は、マニフェスト(政権公約)に「新憲法制定」を明記。憲法に「自衛軍」を書き込み、米国の要求に応えて、海外でともに戦争ができる国づくりまで目指しています。
■民主は「郵政」でも対決の足場なし
民主党の岡田克也代表は第一声で、「小泉総理は郵政の問題しかいわない」と非難。「政府の法案はだめだ。十年後に(民営化して)銀行をつくるというができっこない」といいますが、郵政民営化の問題で、小泉政治に対決する姿勢は示せませんでした。
それもそのはずで、岡田代表自身、郵政民営化には賛成の立場。庶民のかけがえのない生活資金である郵便貯金や簡易保険についても「民営化か廃止かという選択肢をもっている」という立場を隠しません。
政権公約でも、郵貯の預入限度額の引き下げを提案していますが、これでは事業規模が縮小し、郵便局ネットワークの維持もできず、人員削減につながります。結局、民営化して郵貯・簡保をつぶすのが与党案なら、民主党は郵貯・簡保を縮小し、成り立たなくさせてから民営化するという違いにすぎません。
■共産党 大企業、米国いいなり政治に対決
「空前のもうけをあげている財界・大企業にもうけ相応の負担を」「道理にたった自主外交を」――。総選挙の第一声で日本共産党の志位和夫委員長は力を込めました。大企業、アメリカいいなりの自民党政治に、真っ向から対決し、国民の暮らしをまもる仕事ができるのが日本共産党です。
それは、小泉政治で極端になった自民党政治の異常をただす改革の方針をもっているからです。大企業応援の政治をやめ「ルールある経済社会」をつくる改革、アメリカいいなりの大もとにある日米安保条約をやめて平和・中立・非同盟の日本にすすむ方針などを提起しているのは日本共産党だけです。
郵政民営化をめぐっても、その真の狙いが、庶民のかけがえのない郵貯・簡保の資金を日米の銀行・保険業界の食い物にさせるものであることを明らかにし、論戦をリードする力となりました。
二十九日の党首討論会について東京大学教授の松原隆一郎氏は「郵政民営化反対論は『大銀行のためだけにやっている』と単純化した志位委員長の主張に説得力があった」(「朝日」三十日付)と指摘しています。
財界に献金をせびり、政党助成金を分け取りしている自民党、民主党と違い、日本共産党は創立以来、大企業・財界から献金を一円も受け取っていません。政党助成金も思想信条を踏みにじる憲法違反だとして受け取りを拒否しています。国民主権と侵略戦争反対をかかげた八十三年の歴史にたち、間違った政治にはきっぱり反対してきました。だから、国民と力をあわせて自民党政治のゆがみをただすことができるのです。