2005年8月28日(日)「しんぶん赤旗」

小泉・自公政治 このムダ遣い


 “小さな政府をつくる”“税金を節約する”などと繰り返す小泉純一郎首相。しかし税金の使い方を改めず、巨大なムダを温存、拡大しようとしているのが小泉内閣です。「改革」といいながら、止まらないムダ遣いを見てみました。


▼公共事業でも/「削減行う状況でない」 北側国交相

 公共事業の無駄遣いの典型の一つが、国が計画している群馬県の八ツ場(やんば)ダムです。すでに周辺の道路建設が進んでいますが、嶋津暉之・水源開発問題全国連絡会共同代表は「治水・利水の両面で必要性がないのに、国民負担は九千億円の巨額にのぼります。『小さな政府』といいつつ、こういう浪費が平然と行われている。彼らのやっている『改革』がいかにインチキであるかを示す一つのあかしだと思います」と話します。

 八ツ場ダムは首都圏の水需要をまかなうとして一九五二年に構想されましたが、いまや首都圏の水需要は基本的に足りています。しかも近年は人口の頭打ちで水需要が減少しています。にもかかわらず政府はダム建設に固執。反対する住民が地元の前橋地裁をはじめ、一都五県の地裁に同時に提訴する画期的な裁判闘争を行っています。

■巨大事業温存

 今年度予算で小泉内閣は、八ツ場ダム、関西国際空港二期工事などの巨大事業を温存したうえに、新分野への重点配分と称して「都市再生」「スーパー中枢港湾プロジェクト」などにも多額の予算を盛り込みました(図)。

 それでも小泉首相は公共事業費を年々減らしたと自慢します。日本の公共事業費が国内総生産(GDP)に占める比率は二〇〇二年は4・6%。国土交通省は〇四年には3・6%に低下し、フランス3・3%、アメリカ3・2%と同水準になると試算します。「今後は、公共事業予算の削減を行う状況では無くなっている」。経済財政諮問会議で北側一雄国交相が提出した文書の結論です。

■財務省試算は

 ところがこれを覆す試算があります。財務省の主計局が「つねづねフランスやアメリカがこんなに公共事業にカネを注ぎ込んでいるのかと疑問を持っていた」として、従来の試算から文教・福祉施設などをのぞいて試算し直したものです。

 その結果、公共事業費のGDP比(〇二年)は日本が3・7%に対して、フランス1・3%、アメリカ1・0%(グラフ)。日本の突出ぶりが明らかになりました。主計局の担当者は「依然としてわが国の公共事業費は諸外国とくらべて相当な高い水準にある」(財政制度等審議会〇四年十月二十五日)と述べています。

 関西国際空港二期工事 大阪湾を埋め立てて建設した関空に、二本目の滑走路をつくる事業。現在ある一本の滑走路でも年間十六万回の発着能力に対して、実績は〇四年に十万回しかありません。しかも〇二年の十二万回から大きく減っています。政府はこの不必要な事業に総額一兆円、今年度だけでも五百億円をつぎ込もうとしています。

図表

▼ムダの温床は道路特定財源/廃止できない小泉首相

 公共事業の無駄遣いの温床となっているのが道路特定財源です。これはガソリンにかかる揮発油税や自動車重量税など、使い道が道路建設に決められている税金です。国の分だけでも三・五兆円、地方の分を含めると五・八兆円にものぼります。

 一九五三年に国道・県道の舗装率が5%しかなかったためにできた制度ですが、舗装率が96%にあがった現在は廃止すべきものです。必要性の乏しい道路でもカネがあるからつくるというように、無駄を拡大する原因の一つになっています。

 ところが小泉首相は道路特定財源の使途を拡大し、無駄遣いをいっそうひどくしてきました。

 その一つが「直轄高速道路」です。採算の見込みが立たないために道路公団が建設できない高速道路を、道路特定財源をつぎ込んで建設するものです。〇三年度予算に一千億円を計上して始まり、〇五年度は一千七百億円(地方負担も合わせると二千億円)にふくらみました。

 道路公団の民営化とセットで、このように無駄な高速道路を税金でつくる仕組みを新しくつくったのが小泉内閣です。

 直轄高速道路のほかにも、本四公団の債務返済にも流用するなどしてきましたが、この返済も予定よりハイペースで進み、来年度には史上初めて道路特定財源が「あまる」ことが確実視されています。

 時代錯誤の道路特定財源を廃止できないようでは、無駄な公共事業をやめることもできません。


▼軍事費でも/ソ連崩壊後も「対ソ兵器」

図表

 一九五四年に防衛庁・自衛隊が発足してほぼ半世紀。当時、千三百四十九億円から出発した軍事費は、今では三十六倍の年間約四兆八千五百六十四億円に達しています。その「聖域」ぶりは、小泉・自公政権でも変わりません。

■軍艦2隻追加

 軍事費拡大の口実は「ソ連の脅威」でした。しかし、相手のソ連が九一年になくなっても、軍拡は続きました。

 米国防総省の報告書(「共同防衛に対する同盟国の貢献度報告」二〇〇二年版など)によると、日本の軍事費は一九九〇年には、米国とその同盟国のなかで第五位でした。それが九七年には米国に次ぐ第二位に。九〇―〇一年で、米国とその同盟国二十五カ国の軍事費の合計は約二割減っているのに、日本は逆に二割も増やしました。

 異常なのは、旧ソ連との戦争を想定した兵器の調達を続けていることです。どれもお金のかかる兵器ばかりです。

 たとえば「90式」と呼ばれる戦車。一両八億円。標準的な消防車の五十七台分もします。ソ連の地上部隊が大挙して上陸してきた場合を想定した戦車ですが、相手が消えてからも買いつづけ、約三百両も保有。しかも、重量が約五十トンもあるため、橋や路面が耐えきれず、「日本の領土内でしか使わないはずの戦車が、その土地を走れない」(江畑謙介氏『日本の軍事システム』)。それでも小泉政権は、〇五年度予算で新たに十二両の調達費を盛り込みました。

 海のムダ遣いは、イージス艦。一隻で千三百六十五億円もする軍艦で、これも対ソ戦を想定した空母護衛のためのものです。日本で一番艦ができたのはソ連崩壊後の九三年。それから三隻も調達しました。

 小泉政権は、〇二、〇三年度の予算で、あわせて二隻を追加調達する予算を組みました。

■MDに1兆円

 もっと深刻なのは「ミサイル防衛(MD)」。相手国のミサイルを上空で撃ち落とそうというもので、米国の先制攻撃戦略を支える兵器システムです。

 技術的にも未完成なのに、小泉政権が導入を決定し、当面の計画(二〇一一年度末まで)でも八千億円から一兆円というケタ違いの経費をかけようとしています。

 さらに地球上のどこへでも軍隊を送ることを考えた装備の調達にも税金をつぎ込んでいます。

 インド洋などへの長期派遣も想定した“ヘリ空母”(ヘリ搭載護衛艦=千五十七億円)や、戦闘機の海外遠征能力を飛躍的に強化する空中給油機四機(一機二百四十八億円)の調達が、すでに始まっています。

▼米兵には“居間33畳の思いやり”/年間2300億円

 「無駄遣いをなくす」というなら、真っ先に全廃すべきは「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)です。基地そのものの提供を除き、在日米軍の維持経費は米側が負担すると定めた日米地位協定にも違反する負担だからです。小泉政権は、年間二千三百七十八億円(〇五年度予算)もつぎ込んでいます。

 一九七八年度に始まって以来の総計は、四兆七千百二十八億円。このなかには、居間だけで三十三畳もある司令官用家族住宅、運動施設、教会、アルコール中毒患者のための更生施設まで含まれています。

 これだけの負担は、米国の同盟国の中でも、断トツの一位。米国防総省の報告書によると、日本を除く米国の同盟国二十四カ国をあわせた額の約五倍にもなり、「米国の同盟国のなかで、もっとも気前がいい」(「共同防衛に対する同盟国の貢献度報告」〇三年版)と絶賛されています。


▼日本共産党の考え/9条守り、抜本的な軍縮公共事業の総点検を

 日本共産党は、米国の無法な先制攻撃の戦争に日本を参戦させる仕組みづくりを許さない立場から、「ミサイル防衛」や“ヘリ空母”など、新たな軍拡計画にきっぱり反対。憲法九条を守り、抜本的な軍縮をすすめることを訴えています。

 公共事業について日本共産党は、事業を総点検し、中止も含めて公共事業費を大幅に削減することを求めています。道路特定財源は、道路建設以外にも使えるように一般財源化し、年金など社会保障の財源にも活用します。

 ゼネコンのもうけ口となってきた巨大開発中心のあり方をあらため、公営住宅など生活・環境・安全優先の、暮らし密着型の公共事業に転換します。そうすれば、総額を減らしても中小企業の受注を格段に増やすことができます。

 こうしてすべての浪費にメスを入れ、国、地方合わせて十兆円の税金の無駄遣いをなくします。


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