2005年8月27日(土)「しんぶん赤旗」
日韓国交正常化外交文書
韓国政府が全面公開
早期決着求めた 米強い圧力明らかに
韓国政府は二十六日、一九六五年の日韓国交正常化に至る外交文書を全面公開しました。一連の文書からは、国交正常化交渉が米国の強い圧力のもとで進んでいたことが分かります。韓国外交通商省は同日、文書公開は盧武鉉政権が進める「歴史の真相究明」だとし「今後の韓日関係が正しい方向に向かうよう真剣に考える機会になることを希望する」との声明を発表しました。
公開された文書は百五十六件、三万五千三百五十四ページ。韓国政府によると、一月に公開された五文書と合わせ、すべての文書が公開されました。
一九五一年に始まった日韓交渉は六二年、大平正芳外相と金鍾泌・韓国中央情報部長の会談で「無償三億ドル、有償二億ドルおよび民間信用供与」を提供する経済協力方式で合意。このときに作成された「金・大平メモ」が初めて公開されました。
合意に至る過程で米国が日韓両国に対し、早期決着を求めていました。六二年五月の駐日大使から本国への報告書は「池田首相は韓日請求権問題の解決に関し、米国が構想している総額四億ドル、請求権として一億ドルを支払い、残りの三億ドルは長期借款形式で支払う方法で決着することを決心した」と明記しています。
六一年に軍事クーデターで政権を奪取した朴正熙・大統領権限代行が六二年九月にケネディ米大統領に送った書簡では、日韓国交正常化は「反共戦線の結束強化という大局的見地」から見るべきだと主張、「韓日両国の共同利益だけでなく、極東の安全、全自由陣営の結束強化」のために国交正常化が必要だとしています。
六四年十月の韓国大統領府政務秘書官のメモは「今や明らかに(日韓)会談の中心地はソウルでも東京でもなくワシントンに移った」とし、日本と韓国がともに米国の影響力を自国に有利となるよう働きかけている様子を明らかにしています。
また、竹島(韓国名は独島)をめぐっては、六二年九月三日の第六回予備折衝で、日本側が「価値のない島だ。爆破してなくしてしまえば問題もなくなる」と言い、国際司法裁判所への提訴を主張。一方の韓国は一時、米国を念頭に「第三国による調停」を提案していたことも分かりました。
韓国外交通商省の声明は、今回の文書公開が、▽国民の知る権利の伸長▽行政の透明性の強化▽歴史の真相究明―に寄与すると強調。また、日韓交渉では「慰安婦」など植民地支配と侵略戦争による被害の多くが無視されていることから、政界の一部や市民団体が日韓協定の再交渉を求めていることについては、「(協定の)不十分な部分について問題提起があることは承知している」としつつ、「外交交渉の結果として妥結した協定を順守することが、韓国の国際社会における信頼を確保する上で重要だ」として、再交渉を否定しました。(面川誠)
日韓条約 日本、韓国両政府は一九六五年六月、日韓基本条約を締結し国交を正常化。基本条約のほか、請求権経済協力協定、漁業協定、在日韓国人の法的地位協定、文化財協定の四協定などを含めた総称として「日韓条約」と呼ばれています。五二年に始まった本会談は七回に及び、最も紛糾した請求権問題は、日本から韓国への無償三億ドル、有償二億ドル、民間協力資金三億ドルで決着しました。