2005年8月27日(土)「しんぶん赤旗」

労働者いじめ 小泉「改革」

不安定雇用・低下する賃金・長時間労働


 「いつまでこの会社で働き続けられるのか」「これ以上賃金が下がったら暮らしていけない」「このままでは過労死してしまう」―いま働く人たちの多くが雇用、賃金、健康への不安にさらされています。小泉内閣の「構造改革」路線が労働者を苦しめています。(畠山かほる)


グラフ

▼収入減り企業利益増

 民間企業で働く労働者全体の賃金総額は、五年間(一九九八年以降)で十九兆円減少しました。一方、民間企業はもうけ(経常利益)総額を十五兆円増やしています(グラフ参照)。売上高を約四十七兆円減らしているのにです。家計単位では、実収入が年七十万円減りました。労働者の賃金低下分が、企業の懐に入ったかたちです。

 雇用はどうか。正社員は六年間(九八年以降)で三百八十四万人減り、代わって低賃金・不安定雇用の非正社員が三百九十一万人増えています(グラフ参照)。正社員からパート・契約・派遣など非正社員への置き換えが、大規模にすすめられています。二十四歳以下の青年層では、二人に一人が正社員以外の働き方です。

▼法律で犠牲押しつけ

 これら労働者の賃金低下や雇用の不安定化は、企業の身勝手と横暴だけが要因ではありません。橋本内閣(九六年―)に始まった「構造改革」路線を引き継いだ小泉内閣が、労働者を犠牲に大企業をもうけさせるしくみをつくったためです。

■クビ切れば減税

 その一つが、リストラの“蛇口”を開いた「産業再生」法の制定です。人減らしするほど企業減税する制度で、九九年に自民、公明両党の賛成で成立しました。大企業はこれを使い〇五年七月末までの五年九カ月間に、十万人の人減らしを行い、約一千億円の減税を手にしています。労働者のクビ一人につき、百万円もうかる勘定です。〇三年三月末に期限切れの同法は、民主党も賛成に加わり〇八年まで延長されています。

■有期雇用を拡大

 もう一つは、契約・派遣など不安定な非正社員を雇いやすくする、リストラの“受け皿”となる労働法制の改悪です。

 戦後制定された労働基準法は、有期雇用を一年以内に限定し、安定雇用の正社員を基本としてきました。ところが、九八年と〇三年の同法改悪(二度とも改悪に反対したのは日本共産党のみ)で、有期雇用の契約期間は原則三年、専門職は最長五年に延長されました。

 これにより三―五年単位の事業計画が多い企業にとって、有期雇用の使い勝手がよくなったのです。どれだけの期間雇うかの選択権は企業にあり、労働者の雇用が安定することにはなりません。

■雇用責任負わず

 企業にとって有期雇用以上に好都合なのが、派遣労働です。労働者を実際に使う企業が雇用責任を負わずにすむので、不要になった労働者を簡単に切ることができます。労働者が無権利で不安定な働き方を強いられるので、以前は例外的にしか認めていませんでした。

 これを「原則自由」に拡大したのが、自民・公明・民主・社民各党が賛成した二〇〇〇年施行の労働者派遣法の改悪。その後も対象となる労働者や派遣期間が拡大されました。〇四年三月には製造業務まで解禁しています。

■ただ働き合法化

 異常な長時間労働をまん延させたのも「構造改革」路線です。その最たるものが、裁量労働制です。何時間働かせても残業代を払う必要がないので、企業はどんどん仕事量を増やし、労働者は長時間労働を強いられます。導入条件である、仕事の進め方・時間配分への裁量権を労働者がもたないのに、導入しているケースがほとんどです。

 裁量労働制を広範なホワイトカラーに導入することを狙ったのが、自民、公明、民主、社民各党が賛成した九八年の労働基準法改悪です。〇三年の同法改悪でさらに導入対象が広げられました。

 現在、過労死の危険が最も高いとされる月八十―百時間を超える残業をしている労働者は、六人に一人。三十代の男性正社員では、四人に一人にも達します。長時間労働の横行は、健康破壊にもつながっています。うつ病など精神疾患の労災請求・認定件数は過去最多となり、過労死などの脳・心臓疾患は高留まりしています。

 つまり、不安定雇用の増大や賃金低下、長時間労働の横行などは、政府が制度的につくってきたのです。

 小泉内閣は「構造改革」基本方針(二〇〇一年六月)で、「労働市場の構造改革」を打ち出し、「民間の自由な経済活動を阻害する規制を撤廃」するとしました。民間企業が自由にもうけるために、労働者保護の規制を撤廃するのがねらいです。


▼対決する日本共産党

 日本共産党は、小泉「構造改革」路線に真正面から対決してきた政党です。法改悪に反対するだけでなく、労働者を守るための立法―企業再編にともなう労働者保護法案や解雇規制法案、サービス残業根絶法案―も提案してきました。

 貴重な実績もあげています。いま社会問題となっているサービス残業(不払い残業)では、国会で二十九年前から二百四十回以上追及し、〇一年には厚生労働省に“サービス残業根絶通達”をださせました。以降、六百五億円が支払われています。〇三年の国会では「解雇自由化」のたくらみを許さず、労働基準法に企業の勝手な解雇を規制する条項を明記させるうえで、大きな役割を果たしました。

 民主党は、「市場原理を徹底する」ことを結党時の「基本理念」(九八年四月)で明記しています。リストラ・人減らしに歯止めをかけるのではなく、「リストラの進展に対応」(基本政策)するというのが基本的立場です。「企業・団体献金を受け入れる」(〇四年八月二十四日)という民主党は、財界要求にこたえる政党です。

 財界の強い要求をうけて政府が狙う労働者犠牲の法改悪は、今後も続きます。今年三月、労働時間規制を撤廃する制度の導入検討や派遣労働のいっそうの緩和なども、閣議決定しています。

表


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