2005年8月26日(金)「しんぶん赤旗」
「イラク反戦の母」ら秋も行動
ブッシュ追いどこまでも
バスツアー組み全米へ
「なぜ息子はイラクで死ななければならなかったの」。ブッシュ米大統領に直接問いただそうと、大統領が休暇中のテキサス州の農場近くで始まったシンディ・シーハンさん(48)らの反戦活動は、大統領の休暇があけ、ワシントンに戻っても続けられます。さらに今秋数カ月間、大統領の行く先々を追いかけて、反戦機運を全国で高めていく構えです。
シーハンさんらの行動はこの夏、反戦の声を寄せ集める「磁石の役割」(ロイター通信)を果たし、十七日には全米千六百カ所以上で約五万人が参加する抗議行動に発展しました。
■キャンプに復帰
シーハンさんは母親の病気のため、十八日からカリフォルニアへ帰郷していましたが、二十四日にテキサス州の農場近くに設けたキャンプに復帰。「(大統領の夏休み終了予定日の)八月三十一日まではここが私の居るべき所です」「気持ちを新たにしてキャンプに戻ってきました」と語りました。
三十一日以後はバスツアーを組んでワシントンをはじめ全米を縦横に回り、ベトナム反戦運動に匹敵する全国的抗議運動を盛り上げていく方針です。ホワイトハウス近くにキャンプを設置する計画もあります。
シーハンさんとともに「戦死者平和遺族会」を結成したスー・ニーダラーさんはロイター通信に対し、「ブッシュが遊説する所にはどこにでも行きます」「私たちはあきらめないことを思い知らせてやります」と述べています。
ブッシュ大統領はこうした動きとメディアの注目に焦りを感じているようです。二十四日のアイダホ州での演説では、「息子に万一のことがあっても、国のために正しいことをしてこの世を去るのです」と語る米兵の母親を会場に招いて、称賛しました。
■当初は普通の母
シーハンさんも、当初はごく普通の「戦死者の母」で、昨年ブッシュ大統領にも会っています。しかし、形式的な短い言葉をかけられただけで詳しい話ができませんでした。その後、開戦の根拠とされた大量破壊兵器がなかったことがわかり、息子の死の意味に疑問を持ち、反戦・撤兵の声をあげるようになったといいます。
「戦争に訴えた理由がなんだったかを考えれば、息子の死が無駄ではなかったとどうして言えるでしょう」(ニーダラーさん)
今月のギャラップ社の世論調査は米軍撤退・縮小に賛成が56%、イラク派兵は間違いだったとする人も54%に上っています。ハリス社の調査では、ブッシュ大統領の支持率が40%に低下、不支持は58%になっています。
与党・共和党からもヘーゲル上院議員などが「イラクでの行き詰まり」「泥沼化」を語り、撤兵の期限を明らかにすべきだと主張しはじめています。
イラク戦争反対を主張して政府から不法な扱いをうけ争っているウィルソン元駐ガボン大使も、シーハンさんらの行動を支持する声明を発表。「(ブッシュ政権は)都合の悪いことが起こると、個人攻撃に出て傷つけようとする」「公開の討論をしようとせず、政権が悪いとは言われたくないのだ」と、痛烈に批判しています。
イラク問題をめぐりブッシュ政権は国内でも追い詰められてきており、米国民と世論の今後の動きから目が離せません。
(居波保夫)