2005年8月25日(木)「しんぶん赤旗」
公務員 首相は削減いうが…
「小さな政府」でなに狙う
小泉純一郎首相は、「なぜ郵便局は公務員でないといけないのか」といって、公務員を減らして“小さな政府を”と主張しています。それで公共サービスがよくなるのでしょうか――。
■日本の公務員は多い?/主要国でも最少
日本の公務員は多すぎるのでしょうか。公務員の総数(人口比)や人件費(GDP=国内総生産比)で見ても主要国のなかで最少です。(グラフ参照)
国の一般会計にしめる総人件費も、一九七五年に20・6%あったのが二〇〇五年には9・6%に半減しています。
国は、国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障する責務を負っています(憲法二五条)。そのため「全体の奉仕者」として行政サービスを担うのが公務員です。
公務員が少ないほどいいというのは、国の責務を投げ捨てることになりかねません。
いま国民生活を守るうえで公務員が足りない分野は少なくありません。
例えば教育分野。子どもたちと親の願いである「三十人学級」を実現するには、新たに十一万人の教職員が必要です。福祉や防災などの分野でも不足しているのが現状です。(別項参照)
■いまも足りません
●教職員
「30人学級」には11万人の教職員が必要
●消防士
消防力の基準にたいし消防士6万人が不足
●労働基準監督官
監督官は2859人。毎日1事業所を回っても全事業所を回るのに4.2年かかる
●下請け代金検査官
専任は46人。毎日1社回っても6年かかる
■民間にまかせたら/サービスも金次第
小泉首相は「民間にできることは民間に」といいます。
しかし、民間企業は営利追求が目的です。公共サービスが金次第となり、不平等と格差を拡大しかねません。
すでに医療や福祉、保育など「民営化」された分野では、サービスの切り捨てや負担増が国民に押しつけられています。
政府は今年度、「市場化テスト」と称して、新たにハローワーク(職業安定所)などの事業を民間企業に試験的に委託しました。
将来は、失業者が金を払わないと職業紹介さえ受けられない事態も危ぐされています。
郵政も民営化すれば、民間の大銀行がやっているように、もうけにならない地域から撤退して、国民の身近な金融窓口がなくなってしまいます。
■“聖域”にこそメス/4割占める自衛官
そもそも郵政事業は独立採算で、二十七万人の職員の給与には国民の税金は一円も使われていません。民営化すれば税金が節約できるかのようにいうのはごまかしです。
では国家公務員で一番多いのは――。
国が給与を払う六十一万五千人(定員)のうち一番多いのは自衛官。二十五万二千人で41%を占めます。
続いて刑務所・海上保安など治安関係の六万三千人。国民生活に直結する社会保険・労働分野は四万人にすぎません。
財務省は昨年末、「中期防衛力整備計画」をつくるのにあたり、陸上自衛官(十六万人)の四万人削減を提案しました。
これ自体、「米ソ対立崩壊」のもとで控えめな数字でしたが、自民党の防衛族議員が「新たな脅威がある」と抵抗。結局、五千人削減の十五万五千人にとどまりました。
陸自が北海道に配備した三百両の90式戦車(合計三千億円)は、ソ連崩壊でムダとなっても増やし続けたうえに、重すぎて配置替えもできないムダ遣いぶりです。
このほかにも、スパイ活動などが任務の“日本の秘密警察”ともいうべき公安調査庁(千五百人)など、削るべき部門はいくらでもあるのに指一本ふれようとしません。
日本道路公団をめぐる橋梁(きょうりょう)談合で改めて害悪が明らかになった高級官僚の天下りについても、禁止するどころか、「事前に報告する」としただけで温存しています。
こんな小泉首相に「公務員が多い」などという資格はありません。
■日本共産党/教育・福祉・防災など拡充
日本共産党は、国には国民生活をまもる責任があり、公務員をやみくもに減らせばいいという立場には立っていません。軍事や公安警察、高級官僚などの分野にメスを入れるとともに、教育や福祉、防災など国民サービスをまもる分野では拡充すべきだと主張しています。
■財界/“50兆円市場”あてに
もともと公務員削減は財界・大企業が強く求めてきたことです。
政府の経済財政諮問会議(議長・小泉首相)で日本経団連の奥田碩会長は七月、公務員削減は「小さな政府への第一歩」として、「政府の業務を抜本的に縮減するべきだ」と強調しました。
「五十兆円市場」が生まれるとして「官業の民間開放を」と強く求めてきたのは、政府の規制改革・民間開放推進会議議長も務めるオリックスの宮内義彦会長です。
それだけではありません。牛尾治朗・元経済同友会代表幹事は同諮問会議で五月「政府自らが身を切り、効率化を徹底しなければ、国民に増税を要求することなど到底できない」とのべ、国民負担増押しつけのねらいをあけすけに語っています。
■民主党/自民と同じ
民主党もマニフェストで「国家公務員人件費二割削減」を掲げ、「中央政府の権限を限定し、その範囲で強い政府をつくる」としています。
自民党のいう「小さな政府」と同じ立場です。
ねらいも同じ。「岡田政権500日プラン」では、「将来的には国民負担が不可避的に増加せざるを得ないなかで政府が身を切る決意を示し、実行することが求められている」と語っています。