2005年8月24日(水)「しんぶん赤旗」
主張
優勝旗に大汚点
スポーツから暴力を一掃せよ
夏の甲子園で連覇を果たした駒大苫小牧高校の野球部長(27)が、六月と全国大会期間中の八月の二度にわたって部員に暴行を働いていたことが判明しました。学校の職員として、部の運営を、安全や健康などの面から指導しなければならない部長が、生徒に暴行を加え、傷つけていたことは、きわめて重大であり、絶対に許されない行為です。
五十七年ぶりの連覇は、昨年の優勝後のさまざまな重圧を克服してのものであり、多くの高校野球ファンを感動させ、北海道の人たちに大きな勇気を与えました。暴行事件は、それを根本から裏切り、優勝旗に大汚点をつけるものです。
■「体罰」は暴行そのもの
事件の概要は、駒大苫小牧高校の校長の、二十二日夜の説明によれば、以下のようなものです。
――六月二日の朝練習で三年生の部員がエラーをしても「にやけていた」ように見えたので、腹がたって、平手で顔などを数回なぐった。さらに、大会期間中の八月七日、宿舎で、夏ばて防止にご飯を三杯食べる決まりになっていたのに、それを破ってごまかそうとしたので、スリッパでたたいた。
暴力をふるわれた生徒の親は、「三十―四十発、拳で殴られた」、かみあわせが悪くなり、今もあごががくがくする、とのべているようです。
学校側の聴取にたいして、部長は「体罰的暴力をおかした」とのべたとされています。
学校の教師による生徒にたいする暴行を、「体罰」などというのは、犯罪行為をごまかすためのものでしかありません。教育の場から根絶すべきです。
今回の事件でも、暴行の口実は、まったくささいなことです。教師であるなら、話をしてわかるようにするのが当然です。それをせずに暴力をふるったのは、かっとなって自分の立場も役割も忘れていたとしか考えられません。
実際、今年の夏の甲子園大会では、高知の明徳義塾高校が、選手の喫煙・暴力問題で、組み合わせ抽選後の四日に「出場辞退」しました。これ自体が、きわめて異常なことでした。大会出場校の部長であるなら、なおさら、同様の問題を絶対に起こさないよう指導しなければならないはずです。ところが、明徳義塾の「出場辞退」の三日後に、生徒を殴っていたというのですから、言語道断です。
学校側が、事件を知りながら、適切な対処を怠ったとみられる点も重大です。部長を「当分の間、謹慎処分にした」としていますが、問題の重大性を本当に認識しているのかどうか、疑問を感じます。
日本高校野球連盟は、駒大苫小牧高校からの報告書提出を受けて、処分を決める臨時審議委員会を開く予定になっています。問題を起こした学校への処分にとどまらず、どうすれば高校野球から暴力を一掃できるのかということを、真剣に検討し、対応策をとることが求められます。
■生徒、選手の人権を守れ
高校野球だけでなく、日本のスポーツ界には、「指導」に名を借りた暴力が各方面に残っています。
しかし、指導―被指導の関係を、支配―被支配の関係に置き換えて暴力をふるうことは、選手の人権をふみにじる行為です。スポーツを通じてフェアな精神を育むという、スポーツ本来のあり方に反しています。
スポーツの発展を願うなら、選手の人権を守り、暴力をあらゆる場から一掃していかなければなりません。