2005年8月24日(水)「しんぶん赤旗」
郵政民営化
郵貯が銀行になったら…
何かいいことあるの
「民営化」喜ぶのは日米金融資本
郵政民営化とは、身近で便利な金融窓口・郵便局を、民間の大銀行と同じようにすることです。そうなれば、“虎の子”の郵便貯金はどうなるのか。何かいいことがあるのでしょうか。
■店舗減り 手数料高く
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郵便局は、民間銀行の店舗のない五百五十の自治体を含め、全国津々浦々で一律のサービスをおこなっています。現金自動預払機(ATM)の引き出し手数料もとらず、ATMの障害者対応も進めています。
一方、民間大銀行は各種手数料を利用者に押し付けています。普通預金口座でも預金残高により口座維持手数料を取る銀行も増えてきました。(りそな銀行など)
民間銀行は過疎地でも都市部でも採算のとれない店舗を次々と閉鎖。東京三菱銀行とUFJグループの統合を予定している新グループは、「経費削減」のためとして、二〇〇九年までに、さらに国内の百七十店舗を統廃合するとしています。
小泉首相も、民営化すれば「いまの郵便局がなくならないとはいわない」と認めています。
また、民営化では郵貯・簡保の一律サービスの義務付けがないために、郵便局は残ったとしても、民間になった郵貯、簡保の会社がそこでサービスを提供し続ける保障はまったくありません。
結局、民営化されれば、身近な郵便局はなくなり、サービスも大後退、高い手数料を払わされて、少額預金者が金融サービスから排除されるケースが生まれるだけです。何もいいことはありません。
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■「公」なら震災時も機能
「民間にできることは民間に」といいますが、「公」でなければできないことがあります。郵便局のサービスでこのことを示した一つの例が、昨年十月の新潟県中越地震時の対応でした。
震度7の激震が襲った新潟県中越地方。電気、水道、電話などライフラインが断たれましたが、郵便局は職員を確保し業務を続けました。
民間の宅配大手各社が集配を見合わせるなか、長岡市や小千谷市など十一カ所の避難所で、一人ひとりに郵便物を配達。住民から「郵便とともに元気を届けてくれた」と喜ばれました。
一九九五年の阪神・淡路大震災の際には、通帳や印鑑など身分を証明できるものがなくても、保証人をたてれば、現金二十万円に限り支払う「非常払い」措置がおこなわれました。
■郵政に税金投入なし
マスコミなどで郵政民営化を称して「郵政改革」といいますが、ほんとうでしょうか。郵貯・簡保のお金が国債に流れてくるからムダづかいにつながるので、それを断ち切る「改革」が必要というわけです。
しかしムダづかいをなくすには、政府がムダづかいをやめればいいのです。
そもそも郵貯・簡保の資金が、自動的に公共事業や特殊法人に流れる仕組みは、すでに四年前になくなっています。
郵貯・簡保は、運用先として政府の財政投融資計画(財投計画)に必要な資金をまかなう国債(財投債)を購入しているだけです。
民間金融機関も同様に巨額の国債を買っています。
大手ゼネコン、大銀行奉仕の政治、大軍拡こそがムダづかいの根源にあります。「改革」というなら、ここにメスを入れるべきです。
郵政事業に税金が使われていると思われていますが、これも誤解です。一円も使われていません。民営化しても税金の節約にはなりません。
郵政民営化は、改革とは無縁です。国民には不便を押し付けるだけ。喜ぶのは、執拗(しつよう)に求めてきたアメリカと日本の大銀行、保険会社だけです。