2005年8月23日(火)「しんぶん赤旗」

これが大問題

民主「衆院比例80削減」案

切り捨てられるのは国民の声


 民主党は、総選挙マニフェスト(政権公約)の重点項目の冒頭に「衆議院定数80の削減」と、衆院比例代表定数の大幅削減をかかげました。「ムダづかい一掃」といいますが、本当にそうなのか、削減されればどうなるのか。民主主義の根幹にかかわる大問題です。

■身を切られるのは

 民主党の岡田克也代表は二十日、重点項目発表の記者会見で「国会議員がまず自らの身を切るところから始める」として、定数削減をあげました。

 しかし「身を切られる」のは、国会議員でなく、国民の方です。いま衆院の議員定数は四百八十。この数自体、民意を国政に反映させるうえで不十分です。議員一人あたりの人口でみると、日本は欧州諸国の二倍以上です(別表)。つまり、それだけ国民の多様な声が国会に反映しにくくなっているのです。

 憲法は前文冒頭で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し…」としています。それを一気に八十も削減することは、有権者と国会を結ぶパイプの役割を著しく細くするもので、国民の参政権からいって大問題です。

 しかも、削るのが比例代表というのはより重大です。衆院の四百八十議席のうち三百議席は小選挙区、百八十議席が全国十一ブロックごとの比例代表で選ばれています。

 もともと一選挙区から一人の議員を選ぶ小選挙区制は、大政党に有利で、議席に結びつかない「死票」の多い制度です。一方、比例代表は、政党の得票に応じて議席を配分するもので、いまの選挙制度では唯一民意を正確に反映する部分となっています。

 小選挙区制導入のときも、当時の細川護煕首相は「民意を集約する」小選挙区制と「民意を反映」する比例代表制を組み合わせることで「両方を補う」と説明しました。

 この比例部分を削減することは、民意を正しく反映できないゆがみをいっそう高め、多様な民意を切り捨てることになるのです。

表

■少数政党を締め出し

 民主党の主張どおり、比例定数を八十削減すれば、総定数に対する小選挙区の比重が62・5%から75%に一挙に高まり、これまで比例代表で議席を得ていた少数政党が締め出されるおそれがあります。

 実際、前回二〇〇三年の総選挙では、三百小選挙区の「死票」は計二千八百二十三万票余で、有効投票数の48・5%。五割近くの民意が切り捨てられました。自民党は四割の得票で六割の議席と得票率以上の議席を得ました。

 さらに比例代表自体も、一挙に八十も削減してしまえば、定数が三―四という“中選挙区”なみになるブロックもでてきます。これでは民意を反映する比例代表の役割は果たせません。

 大政党以外は国会から人為的に締め出されます。選挙制度を人為的に変え、少数政党を追い出すのは、民主主義に反する暴挙です。

 いまの政党状況でいえば、明らかに日本共産党の国会からのしめ出しをねらったものです。

■単純小選挙区制へ

表

 今回の議員定数削減の狙いは何でしょうか。

 民主党が比例定数削減をマニフェストに初めてかかげた〇三年総選挙で、当時の菅直人代表は「衆院にかんしては日本では将来的に単純小選挙区だけの定数三百もありうる」(同九月三日)と説明。国会でも「衆院で比例(定数)がいま百八十だが、小選挙区制を強めるという意味を含めて、八十削減を提案している」(同十月一日衆院予算委員会)と述べました。

 比例代表をなくし、小選挙区だけによる「二大政党制」を人為的につくり出すのが狙いです。

 このシナリオは、経済同友会など財界が求めているもの。「ムダづかい一掃」などと国民受けを狙いながら、民主党は財界の意向を忠実に実行しようとしています。

■「税金のむだ」いうなら政党助成金の廃止こそ

図

 民主党が「ムダづかい一掃」などというなら、政党・政治家が真っ先に「切る」べきは、政党助成金です。毎年三百億円以上もの税金を日本共産党以外の政党が分け取りしています。

 民主党の政党助成金への依存ぶりは、他党に比べてもきわだっています。本部収入のなんと84・6%を占めているのです(〇三年)。自民党は59・9%、公明党は16・8%、社民党は61・1%です。

 〇三年の前回総選挙では、政党助成金から選挙関係に四十一億七千六百万円を支出。選挙関係費の35・1%を、政党助成金でまかないました。

 日常の党活動も選挙活動も国民の税金に頼りきりの「国営政党」――これが民主党の実態です。

 仮に国会議員を八十人減らしても、国会議員の歳費、立法事務費、秘書給与など約五十七億七千八百万円の“節約”にしかなりません。

 巨額の税金を政党が山分けする“既得権”には一切手を触れずに、民意を反映する比例部分を削減するのは、二重三重に民主主義を踏みにじるものです。


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