2005年8月23日(火)「しんぶん赤旗」
05総選挙 争点を問う
「海外派兵国家」づくり
米国の戦争への本格参戦が狙い
きっぱり反対できる党は
自衛隊のイラク派兵が今年十二月十四日で期限切れを迎えます。自民・公明の与党はその後も派兵を継続する構えです。しかも、米国の先制攻撃の戦争に日本が地球規模でいつでも参戦できる「海外派兵国家」づくりを本格化しようとしています。総選挙の重要な争点です。
■自民・公明 主要任務に格上げ
自民党は、総選挙マニフェストとして初めて「日米安保体制の強化」を明記。自衛隊のイラク派兵については「即時撤退はいたしません」(重点施策)と断言しています。公明党は総選挙マニフェストで「イラク人道・復興支援の継続」を表明し、派兵継続を強くにじませています。
それどころか、両党は総選挙後、海外派兵を自衛隊の主要な任務に格上げする自衛隊法改悪案の協議を本格化しようとしています。
小泉・自公政権は昨年十二月、新しい「防衛計画の大綱」を決定。現行の自衛隊法で「付随的任務」とされている海外派兵を自衛隊の「本来任務」にする方向を打ち出しました。防衛庁はすでに、そのための自衛隊法改悪案の概要を自民・公明両党に提示(三月)し、協議が始まっています。
しかも、自民党は総選挙マニフェストで「国際協力に関する一般法(国際協力基本法)を制定するなど、迅速な対応が可能となるよう検討する」とし、米国の要請に応えて自衛隊を迅速に派兵できる仕組みづくりまで主張しています。
日米両政府は二月、在日米軍再編に関する協議で、米国がイラク侵略戦争の口実にした「テロ」や「大量破壊兵器」への対抗を「世界における(日米)共通の戦略目標」にすることで合意し、米軍と自衛隊との一体化の推進を打ち出しました。
海外派兵の「本来任務」化も、「一般法」も、イラク戦争のような米国の無法な先制攻撃の戦争に日本が本格的に参戦できるようにするのが狙いです。
■民主 “正面から関与”
民主党はどうでしょうか。
総選挙マニフェストでは、イラクの自衛隊を十二月までに撤退させるとしています。
しかし、岡田克也代表は昨年七月の米国での講演で、治安の安定などを条件に「自衛隊を(イラクに)派遣し、PKO(平和維持活動)的な役割を果たさせることは選択肢の一つ」だと述べています。
それは、民主党がもともと海外派兵を積極的に推進する立場にたっているからです。同党は、自民・公明両党が制定してきた海外派兵法に反対することがある一方、海外での「自衛隊の活用」を一貫して主張してきました。
今回の総選挙マニフェストでも「国連の要請に対しては、新たな『国際平和協力隊(仮称)』の創設などについて検討をすすめ、日本として国際平和の維持・構築に正面から関与できるようにします」とし、海外派兵に「正面から関与」することを表明しています。
「日米同盟」についても「アジア・太平洋地域の公共財としての…価値を高めます」とし、「防衛協力を推進」すると明記。海外での米軍と自衛隊との共同作戦態勢の強化を打ち出しています。
■日本共産党 イラク撤退を要求
日本共産党は、総選挙の重点公約で「自衛隊のイラクからのすみやかな撤兵を強く要求」。同時に「海外派兵国家の仕組みづくりをやめさせる」(各分野の政策)と訴えています。
イラク派兵では、サマワの自衛隊宿営地を狙った砲撃が昨年四月から十回にものぼり、自衛隊の車列を標的にした路上爆弾の爆発事件(六月)も起きています。
日本共産党は「政府の『戦闘地域ではない』というでたらめさがいっそう鮮明になっている」(同前)と繰り返し指摘。また、自衛隊が「人道復興支援活動」に極めて非効率である実態を示してきました。実際、サマワでは今月、生活インフラ(基盤)の整備を求める市民数千人のデモが起こりました。
さらに、米国の「有志連合」として派兵継続に固執している国が当初の三十八カ国から十八カ国にまで減っていることを指摘。日本が国際的にも孤立していることを明らかにしてきました。
「海外派兵国家」づくりの問題では、海外派兵の「本来任務」化や在日米軍再編などの動きが、米国の無法な先制攻撃戦争への参戦を狙いにしていることを明らかにし、「日本がアメリカとともに世界の平和に挑戦すること」(同前)になると批判。これをやめさせるため「国民のみなさんと共同を広げることに力をつくします」と訴えています。