2005年8月22日(月)「しんぶん赤旗」
教研集会 親・教師・市民が公開討論
“生きづらい”社会のなか
子どもの発達どうつくる
教研集会最終日の二十一日、大阪府下で学力や「少年事件」、子どもの安全・文化など国民の大きな関心となっている十のテーマで教育フォーラムが行われました。分科会とは別に、大々的に開くフォーラムは教研集会では初めて。各会場には、教職員だけでなく父母や地域の人たち、子どもにかかわるさまざまな団体などから約二千人が参加。子どもの成長・発達を、「共同」してどうつくりあげていくのか、運動の経験報告などをもとに討論しました。
■非行にどう向き合う
■学校を自立の場に
「『少年事件』から子どもの育ちを考えよう」には、親や教師、研究者、弁護士、市民など約三百人が参加。非行に走る子、「キレる子」とどう向き合っていくのか、熱心に討論しました。
パネリストの一人、中学校教師の牧本富雄さんは、問題行動を起こす子を学校から排除しようという動きが強まっていると報告。「排除ではなく、一市民として子どもを自立させる場所にすることこそ学校に求められている」と話しました。
「『非行』と向き合う親たちの会」の能重真作さんは、荒れや非行という現象面だけを見て、子どもたちの人格を決めつけ、内面に目をむけないのは大きな誤りだと指摘。「非行に走るのは子どもたちの責任でなく、困難で生きづらい社会をつくってしまった私たちおとなの責任だ」として、教師と親、地域が手をつなぐことの大切さを語りました。
会場からも発言が相次ぎました。女性教師は、教師同士で話す時間もないほど忙しいうえに、教師への評価制度の導入などで、本来目指すべき教育が困難になっている学校の実態を語りました。
パネリストとして、保護司の青木信夫さん、廣木克行・神戸大教授、藤木邦顕・弁護士なども参加しました。
■競争で学力 伸びるの?
■学力観問い直すべき
「競争で子どもの学力は伸びるの?」のフォーラムには四百五十人が参加。「学力低下」が問題になり、文部科学省が学力テストの点数を競わせる「学力向上」対策を現場に押しつけているもとで、子どもに本当につけたい学力はなにか、どのようにそれを保障するのかを話し合いました。
大阪市の二人の子どもの母親、吉持佳代子さんは、「習熟度別学習」の実施が広がる中で、子どもの心が傷つき、親たちもつらい思いをしている大阪の実態を紹介。「『学力』で分けるのでなく、クラスの人数を減らしてゆったり勉強できるようにしてほしい」と訴えました。
元小学校教師で京都教育センターの浅尾紘也さんが国語教育について、同志社女子大学教授の左巻健男さんが理科について、子どもたちの学力の現状とその背景にある学習指導要領や、点数を競わせ、教員の創意的実践を制約している政府の教育政策の問題点について語りました。
都留文科大学教授の田中孝彦さんは、実際に子どもたちに接してその声に耳を傾けてきた体験から、「いろいろなことを考えようとしていて、知的欲求がなくなったとか、学力が低下しているとは簡単にいえない」と指摘。「子どもが何をわかりたがっているかを確認していくことが大事だと思う」とのべ、文科省などが競争によって向上させるとしている「学力」のとらえ方自体を問い直すべきだとしました。
■いっしょに進める学校づくり
■小学生も思いを語る
「子ども、父母、地域、教職員がいっしょにすすめる学校づくり、PTA活動」には、百人超が参加。親と教師がパネリストとなって学校づくりへの思いを語り、小学生も発言しました。
兵庫県西宮市の高須西小学校では、「一人ぼっちの子育てをなくそう」と「親もたまには学習会」が誕生。PTA活動への積極的な参加や「西っ子しゃべり場」など、学校との垣根を低くするとりくみも続けています。
母親の前田慶子さんは「一歩でもいいから歩み出して親と教師に寄り添う関係になったら、わが子だけでなく周りの子どもたちにも目を向けられるようになる」。同校教師の石本日和子さんは、「教師にとって大切なのは、親の思いを丁寧に聞くことではないか」と話しました。
和歌山県御坊市立塩屋小学校の教師・大川克人さんは、子どもたちの自主的な活動や一枚文集、親同士で回覧する「子育て日記」を始めました。会場では母親三人と小学六年生六人も発言。「子育て日記のおかげで、『そうか。みんなこんなこと考えて生活してるんやな』と親や先生との関係が親密化してきた」(母親の山田佳子さん)、「先生とはとても話しやすいし、何かをする時、はじめに『どうする?』と聞いてくれるのがいい」(小学生)など、みんなが安心できる学級づくりを語りました。
大阪府羽曳野市立高鷲中学校の教師・熊野照司さんは、文化祭で発表する「親熊合唱団」を親に呼びかけ、参加してもらった経験を報告。親の高井良啓子さんは、「親子の会話も増えました。中学校になっても、親は学校のことにかかわってほしい」。