2005年8月22日(月)「しんぶん赤旗」

ドイツ総選挙

党首が旧東独部を中傷

保守野党の支持に陰り


 九月十八日の投票日まで一カ月を切ったドイツ連邦議会(下院)総選挙で、保守野党=キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)陣営幹部の旧東独部に関する発言が波紋を広げ、優位に立っていた同陣営の支持率に陰りが見え始めました。

 問題となっているのは、キリスト教社会同盟(CSU)党首で、前回二〇〇二年の総選挙で保守陣営の首相候補だったバイエルン州首相のエドムント・シュトイバー氏の発言。同氏は十日夜、同州内で、「東の人間が再びドイツの首相を決めるようになるのはがまんできない。破産したやつらにドイツの命運を託せない」と語りました。

 CDU・CSUが今回、首相候補として売り込んでいるのは、旧東独部の出身の女性政治家アンゲラ・メルケル氏。シュトイバー氏の発言は、「シュレーダー首相は旧東独部復興の約束を破った」として、この地域での得票に全力を挙げているメルケル氏の立場を掘り崩すものとなりました。

 CSUは、保守全国政党のキリスト教民主同盟(CDU)のバイエルン州だけにある姉妹政党。連邦議会内ではCDU・CSUとして共同会派を組んでいます。

 シュトイバー氏の発言は、とくにドイツの東西統一以来、政治、経済両面で差別され、ともすれば二級市民扱いされてきたと考えている旧東独部諸州の有権者を憤激させました。この発言のあとの全国世論調査では、CDUは旧東独部諸州で急速に支持を失い、社民党に対する全国平均支持率のリードは20ポイント台から13ポイントに縮まりました。

 シュトイバー氏は、十五日になって、この発言は「左翼党候補のギジ氏(民主的社会主義党=PDS=元議長)、ラフォンテーヌ氏(元社民党党首)を非難する文脈でいったのだ」と弁明しましたが、旧東独部有権者の感情を傷つけたことへの謝罪はありません。

 左翼党は、旧東独支配政党社会主義統一党の後継政党であるPDSを改称、旧西側の労働組合活動家、元社民党員などを選挙名簿に加え、選挙戦に臨んでいます。シュトイバー氏の発言からは、根深い反共姿勢だけでなく、総選挙で支持を伸ばしている左翼党への警戒が浮かび上がっています。

 続いて問題になったのは、旧東独部のブランデンブルク州内相(CDU同州支部長)のイエルク・シェンボーム氏の演説。同氏は十日、今月初めに同州フランクフルト・アンデル・オーデル近郊で起きた九人の新生児遺体発見事件を「旧東独でのプロレタリア化の悪影響」などと発言しました。この事件では三十九歳の母親が殺人・死体遺棄などの疑いで逮捕されていますが、発言は、事件の原因は旧東独政権下での社会的価値の破壊にすべて帰するという乱暴なもの。ラフォンテーヌ社民党元党首とともに左翼党筆頭候補のギジPDS元党首からは辞任要求が出ています。

(夏目雅至)


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