2005年8月22日(月)「しんぶん赤旗」

総選挙 自給率向上 たしかな党は

価格保障制度がカナメ


 日本の食料自給率は、カロリーベースで四割を割り込んでいます。BSE(牛海綿状脳症)をはじめ食の不安は世界的です。将来は食料不足がいわれます。多くの国民は、安全・安心な国産農産物を望んでいます。総選挙では、自給率向上を実現できる確かな党の選択が問われます。

■生活できる価格に

■日本有数の農業県 茨城では

 日本で有数の農業県・茨城県。生産・販売条件も恵まれています。しかし農地の荒廃がすすみ、農業後継者も簡単には育ちません。農家は「農業生産を続けるためには価格保障こそ必要だ」と訴えます。

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■奨励金削られた

 日本共産党の茨城県農業・農民後援会の初見安男さん(同県西農民センター事務局長)が、同県総和町の農家を訪ねると、「価格が暴落しては将来見通しがない」との声が返ってきました。

 政府与党と民主党は、「自由化後に下落した所得に直接助成金を支払う」という政策を掲げています。米と麦、大豆を十ヘクタールほど作付けし、さらに収穫作業を七ヘクタール引き受ける小林栄一さん(50)は、この政策について「これまでも転作奨励金などが削減されてきた。いつまで続くのか。当てにならない」と強調しました。

 初見さんは、日本共産党の米価格保障制度を語りながら、「減反水田には、麦でも飼料用稲でも作付けして価格保障をしないと自給率は上がらない」と訴えました。

■やはり国産野菜

 夫婦と祖父で野菜中心に二ヘクタール余を営農する金沢良行さん(43)は「後継者がいない。将来見通しがない」と説明。ナスの収穫の最盛期ですが、「野菜全体の安値安定が続いている」と訴えます。

 初見さんは「港の見学に行くと、夏でも腐らないポリタンク入りの野菜がいっぱいある。それを脱色して漬物にするという。見学した消費者は“やはり国産野菜だ”となる」と話します。そして直売所の建設など「地産地消」の支援や野菜価格安定制度の拡充をすすめる党の政策を紹介しました。農家からは、価格安定策を掲げる共産党への期待が寄せられました。

■大規模稲作農家の全国組織会長

■「不足払い」の保障を

 大規模稲作農家も、「品目横断対策」に対して不安感をもち、最低生産費を保障する「不足払い」の価格保障創設を要求しています。

 平均経営規模が二十ヘクタールという大規模稲作農家の全国組織「全国稲作経営者会議」の井田磯弘会長は、「米価が趨勢(すうせい)的に下落していくときには下支えになりません」とのべ、市場価格が四ヘクタール規模層の第二次生産費を下回った場合、その差額を補てんするような「最低粗収益保障制度」の創設を訴えています。(「農業協同組合新聞」二〇〇五年一月三十日付)

■基幹的な生産部門として農業を再建―日本共産党

 日本共産党は、党の基本方針を示す綱領に、食料自給率の向上、農業を基幹的な生産部門として位置付ける、と明記している政党です。

 「衆議院選挙にのぞむ日本共産党の各分野の政策」では、食料自給率を早期に50%台に回復するため国の責任を明確にしています。

 そのため、欧米諸国でも実施している「不足払い」など価格保障制度を創設します。農業は環境や国土の保全など多面的機能をもっており、面積に応じて補助金を直接交付する直接支払い制度を組み合わせます。食料自給率を向上させたEU(欧州連合)はおこなっています。(グラフ)

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 日本の稲作では、平均生産コストとなる目標価格(六十キロ一万八千円程度)と市場価格との差額を政府が100%補てんします。麦や大豆、食肉など主な農産物も価格保障が必要です。そうすれば価格が下がっても、青年が将来展望をもって農業再生に踏み出せます。

 条件不利地域の環境を守る直接支払い制度を拡充し、平場地域にも広げます。財源は、約三兆円の農林水産予算を改革し、一兆円程度を確保します。漁業ができなくなっている諫早湾干拓などムダな公共事業はやめます。公益法人への助成金・委託金を見直します。

 担い手を選別・切り捨てるのではなく、青年から高齢者まで、地域で多様な担い手を育てることを重視しています。「青年農業者就農支援制度」を国がつくり三年間に月十五万円を支給します。

 WTOルールでも価格保障ができないわけではありません。アメリカも主な農産物で不足払いをしています。

 命の源の食料や農業にかかわる政策を自主的に決める権利「食料主権」は、国連人権委員会で採択されています。アジアの民衆も食料自給の声を高めています。多国籍企業の利益本位のWTO改定こそ世界の流れです。

■自公民

■輸入拡大が前提自給率向上せず

■政策を見る

 小泉内閣は、二〇一〇年に45%という食料自給率向上目標をすでに放棄し、十年後に先送りしています。

 民主党、社民党も食料自給率を引き上げるといいます。いまの食料をめぐる深刻な事態の反映ですが、問題はその実効性です。

 各党とも、農産物の輸入自由化を前提にし、補助金を直接農家に交付する「直接支払い」を掲げています。直接支払いはWTO(世界貿易機関)協定で「生産刺激的でないこと」を条件にした政策です。

 輸入を増やしておいて食料自給率を向上させることはできません。

 背景には、現在交渉がおこなわれているWTO協定やFTA(自由貿易協定)で、農産物関税を縮小・撤廃することが当然だとの財界要求があります。

■9割の農家除外

 日本は約二百九十万戸の農家があり、多様な形態で地域農業を支えています。それなのに自民、公明の両党は、中小農家は「効率的でない」とし、九割近くの農家を支援対象から切り捨てます。

 そのやり方は、水田への転作奨励金や、米や麦、大豆、テン菜など個々の農作物への価格支持策を廃止します。「選別した農家」に作付面積などに応じて交付金を支払うといいます。

 二〇一五年には四十万戸と法人化した集落営農数万だけに支援を限定するというものです。

 マニフェストでは、「品目横断的な経営所得安定対策等を実施」(自民党)、「品目的横断的な直接支払い制度を導入」(公明党)とし、対象は「効率的な経営体」と強調しています。

 対象となった農家も安定するわけではありません。予算規模は削減するのが大前提です。「外国との生産条件価格差の是正」と「収入・所得変動緩和対策」の二段階支払いといいますが、現行範囲内です。

 小泉内閣は「攻めの農政」といい、輸出を増やすとしています。一方で輸入拡大を受け入れることが前提です。

 輸出は、日本の農産物のなかでわずかです。日本で最大の輸出品目はリンゴですが、昨年は国内リンゴ価格が上昇したため、輸出先との価格差が大きくなりすぎて激減するなど不安定です。

■価格は市場任せ

 民主党はマニフェストで、直接支払いの対象を「原則として販売農家全て」にするといいます。総額を一兆円規模として米・麦・大豆・雑穀・菜種・飼料作物などで実施するといいます。

 しかし農産物価格は市場まかせというのが、同党の基本的立場です。価格が大幅に下落するなかでは破たん必至です。

■BSE・セーフガード…

■国政動かす共産党

 日本共産党の国会議員団は議席は少なくても、農民連(農民運動全国連合会)や食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)などの運動と結び、食の安全と農業を守るため国政を動かしてきました。(表)

 BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)の安全対策が未確立なアメリカの牛肉輸入再開圧力を許さない課題でも同じです。

 自民・公明党の小泉内閣は、昨年十月には早くも貿易再開手続きをすすめることを「日米合意」。輸入解禁のお墨付きを得るために、食品安全委員会に月齢二十カ月以下のアメリカ産牛肉の安全評価を諮問しました。

 このなかで日本共産党国会議員は、日本が誇るBSE全頭検査の堅持を一貫して求めるとともに、米政府がBSEの危険性を低く見積もっていると指摘した米会計検査員の報告を明らかにするなど、同国のズサンな安全管理体制を一貫して追及してきました。「全頭検査は世界の非常識」などと暴言をおこなった島村農水相(当時)には、高橋ちづ子衆院議員(当時)=比例代表東北ブロック候補=が対米従属性を明らかにし、発言を謝罪させています。

 アメリカにも財界にもきっぱり物が言える日本共産党だからこそできることです。

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