2005年8月19日(金)「しんぶん赤旗」

高額療養費

自己負担上限引き上げ

「改革」の名で政府が検討


 厚生労働省は、医療費が高額となった場合の自己負担限度額(高額療養費制度)の引き上げを検討しています。新たな患者負担を求めるもので、小泉内閣がねらう次の医療「改革」の一つ。今秋までに厚労省案としてまとめようとしています。


 自己負担(三割負担、高齢者は一割)に上限を設ける高額療養費制度は、がんなど重い病気やケガなどによる高額手術や長期入院、治療が長期にわたるときに患者負担を軽減する仕組みです。自己負担限度額を超えた場合、超過分があとから払い戻されることになります。

 例えば七十歳未満の人が、胃がんで三十日間入院した場合、総医療費が一カ月百五十万円になれば、自己負担限度額は八万四千八百九十円になります。(計算式参照)

表

 限度額は、七十歳未満と七十歳以上に分かれ、それぞれ所得によって三〜四段階の限度額が設定されています。

 サラリーマンなど現役世代が対象となる七十歳未満は、医療費が高くなるほど限度額も引き上げる定率制となっています。所得が「一般」(住民税課税)の場合は、基礎限度額の七万二千三百円(月額)のうえに、かかった医療費から二十四万一千円を引いた額の1%(医療費七十四万一千円なら五千円)を加えた金額が限度額になります。住民税非課税の「低所得」は三万五千四百円が負担限度額となります。

 七十歳以上は、所得が「一般」の人で月四万二百円です。住民税非課税世帯の「低所得」は、受け取る年金額に応じて月一万五千円と、月二万四千六百円の二段階に分かれています。外来はこれより低い限度額となっています。(表参照)

 こうした限度額の引き上げが、厚労相の諮問機関の社会保障審議会医療保険部会で議論されています。引き上げを検討する口実は、高額の医療サービスを受けて限度額を利用する人と、受けない人の負担の「公平」を図るというものです。「公平」にするためという口実で負担増の痛みをがまんせよという言い分です。

 厚労省の念頭にある限度額の水準は月収の50%。制度発足時(一九七三年)の50%に比べて現在は25%の水準になっているが、これで適切なのか低くはないかと問題視しています。

 自己負担限度額引き上げは、医療費抑制のための「適正化」策として打ち出されたもので、医療費に含まれる国庫負担の軽減が目的です。議論中の社会保障審議会医療保険部会の委員からも「雇用不安にさらされている人たちの生活不安をさらに高めるもの」(久保田泰雄連合副事務局長)、「つらい立場を救うのが(限度額の)目的。病気になるのは受難者だ」(松原謙二日本医師会常任理事)など反対の声があがっています。


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