2005年8月19日(金)「しんぶん赤旗」

新潮社から『私の戦後六〇年 日本共産党議長の証言』出版

不破議長が出版記者会見


 新潮社から二十三日発売で、『私の戦後六〇年 日本共産党議長の証言』が刊行されるのに先だって、日本共産党の不破哲三議長が十八日、都内の新潮社で同社主催の記者会見に出席しました。出版にいたった経緯や本の内容、歴代首相との論戦の思い出などにふれつつ、日本共産党の主張は「戦後日本の政治史の結論にかなっている」と語りました。

■「意外の感」だった出会い

 「不破さんの本を新潮社から刊行することに意外の感をもたれた方もいるのではないか」。会見に先だってあいさつした新潮社の伊藤幸人出版企画部長は、こう切りだし、「戦後六十年フェア」の「目玉商品の一つ」として出版にいたった経緯を説明。「日本共産党は戦後六十年、政権の座についたことがなく、政治のなかでメーンストリーム(主流)でなかったかもしれない。そういう立場だからこそみえてくる時代の実相、真相があるのではないか。政治的立場を超えて、戦後六十年をもう一度考え直すヒントが詰まっていると思う」とのべました。

 不破氏も「私の本を新潮社から出す意外性」から語り始めました。昨年六月、不破氏は文化放送の企画した「政治塾」で憲法の話をした際、日本で憲法が施行された翌年から、米政府と軍部が日本に再軍備をさせるために憲法改定の相談を始めたことなどを語りました。その話に、新鮮な印象を受けた新潮社の担当者が「そうした事実は、戦後史を語るときにほとんど知られていない。不破さんのところへいけば、これまでの常識とされてきた歴史と違う政治史がわかるのでは」と企画をたてたのです。

■十四のテーマで歴史を語る

 「政権党とは違った立場で戦後の政治に携わってきたなかで、理解していること、つかんでいる流れを事実として話したら、いまの日本の政治のあり方を考えるうえでなにか役立つ材料を提供できるのではないか」。不破氏は、企画を受けた思いをこう語ります。

 実際の作業は、今年二月にジャーナリストの角谷浩一さんが十数時間にわたるインタビューを行い、それをもとに不破氏が書き上げたものです。

 本の特徴として、不破氏は、戦後史をただ年代的に追うのでは脈絡がつかなくなるため、歴史の流れにそって十四のテーマを立て、テーマごとに戦後六十年を見わたして記述したことを説明。さらに、どんな問題でも日本共産党としての立場はあるが、「歴史を語る限りは、自分が体験した事実、自分で事実として確かめたものでつづることを最初から最後まで貫いた」とのべました。

 そのなかで、「自分でも改めて気付いたこともあった」とのべた不破氏は、その一つとして「官から民へ」などと、「民」=民間大企業が模範という風潮になったのはなぜかを解説。七〇年代には、列島全体にわたる公害や石油ショックでの買い占め騒動、ロッキード汚職などが相次いで起こり、“大企業は警戒すべき相手”というのが社会の当たり前の見方だったのが、八〇年代の「土光臨調」で“財界の大御所が質素な暮らしをしている、民間企業こそ社会の模範だ”と大宣伝され、大企業結構という風潮に変わったとのべました。

 不破氏は「私にとっても、多くの発見のあった企画。日本の政治のあり方、これでいいのかを考える材料になればありがたい」とのべました。

■「私たちの立場は戦後史の結論にかなっている」

 会見では記者から、「これまでの人生に悔いはないか」「戦後六十年をふりかえり、去来したものは」などの質問も。

 不破氏は「悔いるところはない。若かったけれども、十六歳と十一カ月で日本共産党の道を選んだことは正しかった。いろんな波乱があったが、進んできたこの道が日本と世界の未来につながると大いに確信を深めている」と述懐。また、戦後六十年を総括してみて「私たちが現時点で主張し、提起していることが、戦後の日本の政治史の結論とかなっているという確信を、いっそう事実をもって深めたことが一番だった」と答えました。


■歴代首相のなかでも小泉首相は…

 不破哲三議長は十八日の記者会見で、十八人の総理と対決してきての感想を問われました。

 そのなかで、不破氏は、七〇年代の国会は「今よりはるかに活力があり、面白かった」とのべ、当時対決した首相は「それぞれなりに論戦しがいのある首相だった」とのべました。

 当時は自民党内でも、幹部たちが自民党政治のビジョンを競い合い、野党側も今のように自民党寄りでなく、自民党に代わる革新的な提起を競い合っていたと指摘。「だから国会の議論も活発で、議論に負けたと思えば共産党の要求であっても実行しようとしたものだった。その時代と比べると、(今は)政治の活力のなさ、面白さの足りなさを感じる」とのべました。

 「小泉政治」についても、世界でも異常な自民党政治の三つの異常―過去の間違った戦争の“名誉回復”をやろうとしていること、もっぱら「アメリカの窓」から世界をみること、“ルールなき資本主義”の国をつくってきたこと―をきわだたせていると指摘。中国や韓国との関係を壊しても「信念だ」として靖国参拝に固執する、イラク問題では世界に先駆けて支持を表明し自衛隊を派兵したこと、内政では財界応援型に徹していることなどを指摘しました。

 そして、首相のワンフレーズ政治について「意識的に保守党なりに積み上げてきた論理もつぶしている。自民党をぶっ壊すより、政治の論理を壊している」と批判しました。


■『私の戦後六〇年 日本共産党議長の証言』の目次

 不破哲三議長の『私の戦後六〇年 日本共産党議長の証言』(新潮社)の目次・構成は次の通りです。

 序章 終戦まで

 第一章 あの戦争は何だったのか

 第二章 占領時代と新憲法

 第三章 日米安保条約

 第四章 「日米核密約」

 第五章 ベトナム戦争

 第六章 田中角栄氏と『日本列島改造論』

 第七章 七〇年代・国会の活力

  佐藤栄作首相の場合

  田中角栄首相の場合

  三木武夫首相の場合

  福田赳夫首相と大平正芳首相の場合

 第八章 「臨調行革」と“ルールなき資本主義”

 第九章 北朝鮮問題――真相解明と解決への探究

 第一〇章 ソ連崩壊。その後の世界

 第一一章 「超大国」の圧力と日米経済関係

 第一二章 「北方領土」交渉はなぜうまくゆかないのか

 第一三章 海外派兵と憲法改定

 第一四章 野党外交を展開して

 第一五章 二一世紀の日本を考える

 インタビューを終えて(角谷浩一)


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