2005年8月17日(水)「しんぶん赤旗」

主張

空母母港化と核

持ち込みを容認する日米密約


 政府は、横須賀港を米空母ミッドウェーの「母港」とするにあたり(一九七二年十一月)、核持ち込みを容認する約束をしていました。国際問題研究者の新原昭治氏が、米政府解禁文書(七三年四月十九日付「米国務長官から在日米国大使館あての極秘電報」)を入手、分析し、明らかにしています。

 これは、日本の平和と主権にかかわる重大問題です。

■「核密約」の拡大

 政府は、日米安保条約を締結するさい、米核兵器積載艦船の一時寄港(トランジット)は事前協議の例外として適用しないとの「核密約」を結んでいます(六〇年一月六日)。これを、新たに米空母の「母港化」にも適用することにしたのです。

 安保条約の事前協議制度は、米軍の配置や装備の重要な変更、戦闘作戦行動のさいには日本政府と事前協議をするというものです。しかし、実際は、陸地の基地に固定した形で配備する核兵器は事前協議の対象だが、艦船の一時寄港は通過(トランジット)であり、持ち込みにあたらない、といって核持ち込みを認めています。

 今回明らかになった極秘電報で、ロジャーズ国務長官は、「“母港化”は“駐留”ではないし、母港化した空母あるいはその他の米艦船の寄港は通過取り決めの部類に入るという米政府の立場を、日本政府は受け入れている。したがって事前協議の必要は除外されている」とのべています。

 空母の「母港化」は安保運用上はじめてのことでしたが、「母港化」もトランジットであり、核持ち込みではないとする米政府に、日本政府が同意していたということです。六〇年密約の拡大適用です。

 しかし、空母の「母港化」はトランジットなどというものではありません。母港になるとは、米空母や艦船の軍事作戦の根拠地になるということです。一時的寄港と違い、第七艦隊が横須賀港を足場にして、世界の紛争に殴りこみ作戦を行うことを保障することを意味します。

 米政府は、空母打撃戦力を世界に緊急展開できるようにするため、核兵器を積載したまま入港し、出撃できる海外「母港」を必要としました。このため、日本政府に圧力をかけて、空母の母港化と「核密約」を拡大適用させたのです。

 二〇〇〇年に不破委員長(当時)が暴露した、レアード国防長官の七二年六月十七日付ロジャーズ国務長官あて書簡は、日本との交渉にのぞむ方針の調整を示していました。米政府は、「核積載艦の入港には事前協議条項は適用されない」と強調し、「核密約」の適用のための「内々の協議」を要求しました。 

 日本政府は、国会で、「母港ではなく空母乗組員の家族が居住するもの」なので、事前協議でいう配置の重要な変更ではないとの理屈で、「母港化」を強行しました。米政府のいいなりに、核密約にそった動きをしていることは重大です。

■ただちに破棄を

 日本は、被爆国として核兵器廃絶の先頭にたってきました。だからこそ、政府も非核三原則を順守と言ってきました。しかし、ブッシュ政権は、核兵器使用を柱とした先制攻撃戦略を強化しています。非核兵器国を標的にするものです。巡航ミサイルなどの核兵器が持ち込まれている可能性は大きくなっています。

 日本を米国の核兵器使用の足場にさせるわけにはいきません。ただちに、核密約を破棄すべきです。


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