2005年8月15日(月)「しんぶん赤旗」
主張
第2次大戦終結60年
戦争を許さない決意を新たに
終戦記念日にあたり、戦争を許さない決意を新たにしたいと思います。
戦後六十年、日本は、外国と、直接、戦火を交えることなく過ごし、戦争を体験していない人が多数になりました。素晴らしいことです。
一方、「あの戦争」と言っても通じない人も増えました。戦争の記憶の継承が十分でないのにつけこみ、侵略戦争を正当化し、憲法第九条を改悪しようとする動きもあります。
日本を戦争の道に逆戻りさせる危険なたくらみを阻止し、平和な未来を開くため、力を合わせましょう。
■歴史偽造は未来を奪う
日本は、侵略戦争によって、二千万を超すアジアの人々の命を奪いました。その一人ひとりに親がおり、兄弟姉妹、配偶者や子ども、孫がいたかもしれません。遺族は、おそらく、億単位になるでしょう。それより多くの人が傷つけられ、財産を奪われました。犠牲者の苦しみと悲しみを理解する人間の心をもつなら、「日本の戦争は正しかった」とは、口が裂けてもいえないはずです。
ところが、小泉首相が参拝に固執する靖国神社は、「自存自衛」のため「アジア解放」のための戦争だったと宣伝しています。『新しい歴史教科書』(扶桑社)も、侵略戦争を推進した天皇制政府や靖国神社と同じ見方にたって、「自存自衛」論を書いています。
小泉首相の靖国神社参拝や『新しい歴史教科書』(扶桑社)の検定合格は、侵略戦争正当化論を政府が「公認」することを意味します。憲法の平和原則に反し、侵略戦争の否定という戦後の世界政治の基本からはずれる重大な誤りです。アジアや世界の国々との友好関係を壊し、国民の未来を奪うことになります。
こうした誤りを根本的に克服するためには、日本が侵略戦争を行ってアジアの人々に大変な犠牲を強いたという基本的な事実を、国民共通の認識にする必要があります。
ほとんどの国民は、戦後になって初めて、日本の戦争は侵略戦争だったと知るにいたりました。しかし、侵略戦争の最高責任者である昭和天皇の責任が不問にされたため、侵略戦争の全体像が明確になったとはいえない状況が続きました。戦後六十年の時の流れは、そうした問題も含め、歴史を冷静に見つめ、客観的に考える条件を広げています。
侵略戦争正当化論が繰り返し出てくる根源には、戦後政治のゆがみがあります。
ゆがみのひとつは、戦犯政治家や侵略戦争を推進した政党の後継者が、戦後も政権を握ってきたことです。自民党結党(一九五五年)時の幹事長が、A級戦犯容疑者として逮捕された経歴をもつ岸信介氏であり、首相まで務めた(五七年二月―六〇年七月)ことは、その典型です。アメリカは、日本をみずからの世界支配戦略に利用するため、戦犯政治家の復活を容認しました。
■危険は自民党政治の中に
さらに、アメリカは、日本に日米安保条約を押し付け、占領時代からの米軍基地を存続させるとともに、日本をアメリカの戦争に動員する仕組みを強化してきました。自衛隊の創設・強化も、憲法改悪策動も、アメリカの「押し付け」です。軍事同盟絶対視の小泉政権は、ブッシュ米政権いいなりにイラクへの自衛隊派兵を強行。自民党の憲法改悪案は、海外の戦争にまで出撃させる「自衛軍」の保持を明記しています。
戦争の危険は、自民党政治の中にあります。平和への願いをこめた、国民の断固たる審判が必要です。